第17話

第十五章 寂しい月 青江視点
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2022/01/12 00:23
────────数十分前。
にっかり青江(極)
にっかり青江(極)
此処がオンボロ寮、か
薬研藤四郎(極)
薬研藤四郎(極)
今は中に大将の式神と、御友人がいるそうだ。気付かれる前に手早く済ませるぞ
毛利藤四郎(極)
毛利藤四郎(極)
ですね!
薬研君に言われた通り、毛利君とオンボロ寮付近に現れた時間遡行軍を次々に倒した後、短刀達は念の為他の場所も見てくるとだけ言い、別の場所へ行ってしまう。
そんな中、玄関から人の気配を察知し、見に行くと扉が僅かに開いた。中から一人の少年がこちらを見ている。
にっかり青江(極)
にっかり青江(極)
(おっと。主の友人かな?)
少年が最初に見たのは僕と居る女性の幽霊。
次に、時間遡行軍を斬ったあとの血濡れた刀。
本来なら、時間遡行軍の残骸も血も暫くすれば消えるのだが……僕の刀に付いていた血はまだ消えていなかった。
にっかり青江(極)
にっかり青江(極)
……僕達を……見てしまったね?
信じてくれるかは分からなかったが、此処は幽霊のフリでもしてやり過ごそうとし、軽く怖がらせてみる。
主から学校には普通にゴーストもいるし、生徒達は生徒達で中々肝が据わっている部分もある……と聞かされていたので、正直怖がってくれるかどうかは怪しかったが、意外にも少年は怖がって扉を閉め、中へ入ってくれた。
秋田藤四郎(極)
秋田藤四郎(極)
もー、意地が悪いですよ。にっかりさん
にっかり青江(極)
にっかり青江(極)
おや、秋田君。見られてしまったかな
薬研藤四郎(極)
薬研藤四郎(極)
けど、今ので誤魔化せたんなら良いんじゃねぇか?後は、式神の大将が何とかしてくれるだろ
にっかり青江(極)
にっかり青江(極)
戻って来るのが早かったね。周辺はどうだい?
今剣(極)
今剣(極)
とくにもんだいはありません
乱藤四郎(極)
乱藤四郎(極)
長居するのもまた誰かに見られて良くないから、早く帰ろ〜
毛利藤四郎(極)
毛利藤四郎(極)
ですね
乱君に言われて元の世界に帰る際、寮の中から楽しげな声が聞こえた。今まで特に気にしていなかったが、主は……家族と共に過し、学校に通い、友人と遊んで笑ったり、人間として寿命を迎える人生を望んだことはあるのだろうか。
にっかり青江(極)
にっかり青江(極)
(何て本人に聞くのは野暮かな。
なんせ僕達の主は……人間としての意識よりも、僕達とはまた違った“神様”としての意識の方が強いみたいだからね)
僕達の主は人間では無い。
もしも主の“友人達”が主の正体を知ったらどのような反応をするのか……少なからず興味はある。
人としての意識から離れた主だからこそ、僕達の霊力も神格もより高くなった。
それ故に、他の本丸の個体とは違い、人間達の行動がより一層不思議に見える。
だが、そこが面白かったりもする。
乱藤四郎(極)
乱藤四郎(極)
青江さーん、どうしたのー?
寮の方見てボーッとして
にっかり青江(極)
にっかり青江(極)
いいや、何でもないよ。帰ろうか
にっかり青江(極)
にっかり青江(極)
(主は死なない。本人はそれを嘆くわけでもなく、むしろ受け入れている。
人が当たり前のように死んでいくことも。時代の変化も。形あるものは何れ朽ちていく。生きている限り、進化していく。なら、この戦いが終わった後……僕達が主を置いてけぼりにしてしまう訳だが、主は……僕達との別れさえも受け入れ、当たり前のように次の時代へと進んでいくのだろうか)
携帯型時空転移装置を寮から離れた場所で起動すると、足元が光り出す。
消える寸前、静かに月を見上げた。
暗闇の中で綺麗に輝く月だが、何処か寂しそうに見える。
主は──────────
にっかり青江(極)
にっかり青江(極)
……一人であのそらを飛ぶのだろうか

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