オンボロ寮では皆が楽しく話をしながらお菓子を食べ、映画鑑賞をし始める。
その様子を僕は“本丸”の執務室で“観て、感じ取って”いた。
今日の近侍である加州清光が小さく言い、「まぁね」とだけ返した。
机の上には書類が何枚か重なっているが、長谷部達が半分終わらせてくれたお陰で数枚片付ければ終わる。清光も手伝ってくれるし更に早く終わらせる事が出来るだろう。
エースとデュースの言動や行動を振り返りながら窓の外を向いて話をする。
清光は書類をトントンと机の上でまとめ、黙って話を聞いていた。賑やかなのもいいが、こういう静かな時間も嫌いじゃない。
清光は静かに立ち上がると、まとめた書類を僕の目の前に出して「ほら、こんのすけが来たらちゃんと渡しなよ。それと、早く短刀達のとこ行ってやんな。きっと待ってるだろうし」と気遣ってくれる。素っ気ないが……根はやはり面倒見のいい“加州清光”なのだと実感する。
執務室から出る際、オンボロ寮での会話が脳内に響く。エペルが式神の僕に“例の話”をしているみたいだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。