木曜の昼下がり。滅多に無い一日休み。遊びに出る者、ずっと寝ている者、作業室にこもる者。色んな過ごし方の中で、俺とジュンは、一緒にいた。特に何をするわけでもなく、そばにいるのが当たり前な、そんな感じで。
やつは俺に甘い。
ドアホンが鳴り、荷物を受け取ったジュンが隣に座る。
『ウォヌ~、これなーに?』
宛名の所には俺の名前が印刷されている。こないだ頼んだ…。
「ピアスと…ネックレスだ、多分。」
『へぇー!早くみたい!!開けて開けて』
…いつも思うけど、梱包が固すぎる。ハサミは遠くにあるから面倒臭いな。仕方ない、手で。
「ふんっ!…んっ!!」
『ちょっ、ちょっと何してんのwハサミは?』
「遠くてめんどい。手で開くしね」
『開いてないじゃんww貸して』
ぱっと取って、プチプチっと開ける。同じ男なのに、くそ、悔しいな。
「ありがと。カッコイイっしょ」
『うん、ん?これロブじゃなくない?』
「あ、気づいた?今度アウターコンクいこうと思ってて」
※ロブ-耳たぶ
アウターコンク-軟骨の1番凹んでいるところ
『やー痛そー!!…そっちは??』
「こっちは普通のネックレス。」
自分の好きなジャンルが定まっていなかった訳じゃない。でも、自我が形成される時期をメンバーと過ごしてきたから、アクセサリーの趣味も少しづつ変わってる。特にクプスヒョンの影響がでかいかったな。最近は中性的なデザインのが増えてきた。…隣にいるこいつに影響されて。
『これめっちゃ好き。俺も買おっかなー』
好きなの知ってる。欲しいって思った時、お前の顔が浮かんだんだから。
「あげよっか?」
『1回ウォヌが付けてみてよ。ちょっと貸して』
後ろに回って、首に当てる。俺がファンだったら、爆死してるに違いないだろう。現実、今、俺が危ない。ネックレスの付いた俺をマジマジと見る。
『可愛い、やっぱウォヌが付けな』
そこで、似合ってるって言わないところがこの男の罪な所。 最高の顔をひっさげて、魅惑的な笑い方で、ほんと罪だ。ただのメンバーに向けてじゃないのが分かってるから余計に心臓が痛い。鳴るな、五月蝿い。
『顔、赤いよ?』
「誰のせいだ」
クスクスと、いたずらっ子のように肩で笑う。おいおい、さっきのジュナはどこに行ったんだと、そのギャップにまたやられて。
ふらっと消えたかと思うと、二人分のコーヒーを持って帰ってくる。
『このお菓子美味しそうでしょ?一緒に食べようと思って買ったんだー』
幸せとはこの事だろう。ジュンが隣にいるだけで、何気ない話をするだけで、暖かくなる。テーブルにあるお菓子も、俺に微笑みかける顔も、何もかもが俺に甘い。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!