前の話
一覧へ
次の話

第2話

もういっちょ
3,804
2019/03/18 13:24
 木曜の昼下がり。滅多に無い一日休み。遊びに出る者、ずっと寝ている者、作業室にこもる者。色んな過ごし方の中で、俺とジュンは、一緒にいた。特に何をするわけでもなく、そばにいるのが当たり前な、そんな感じで。

やつは俺に甘い。

ドアホンが鳴り、荷物を受け取ったジュンが隣に座る。

『ウォヌ~、これなーに?』

宛名の所には俺の名前が印刷されている。こないだ頼んだ…。

「ピアスと…ネックレスだ、多分。」

『へぇー!早くみたい!!開けて開けて』

…いつも思うけど、梱包が固すぎる。ハサミは遠くにあるから面倒臭いな。仕方ない、手で。

「ふんっ!…んっ!!」

『ちょっ、ちょっと何してんのwハサミは?』

「遠くてめんどい。手で開くしね」

『開いてないじゃんww貸して』

ぱっと取って、プチプチっと開ける。同じ男なのに、くそ、悔しいな。

「ありがと。カッコイイっしょ」

『うん、ん?これロブじゃなくない?』

「あ、気づいた?今度アウターコンクいこうと思ってて」

※ロブ-耳たぶ
アウターコンク-軟骨の1番凹んでいるところ

『やー痛そー!!…そっちは??』

「こっちは普通のネックレス。」

自分の好きなジャンルが定まっていなかった訳じゃない。でも、自我が形成される時期をメンバーと過ごしてきたから、アクセサリーの趣味も少しづつ変わってる。特にクプスヒョンの影響がでかいかったな。最近は中性的なデザインのが増えてきた。…隣にいるこいつに影響されて。

『これめっちゃ好き。俺も買おっかなー』

好きなの知ってる。欲しいって思った時、お前の顔が浮かんだんだから。

「あげよっか?」

『1回ウォヌが付けてみてよ。ちょっと貸して』

後ろに回って、首に当てる。俺がファンだったら、爆死してるに違いないだろう。現実、今、俺が危ない。ネックレスの付いた俺をマジマジと見る。


『可愛い、やっぱウォヌが付けな』


そこで、似合ってるって言わないところがこの男の罪な所。 最高の顔をひっさげて、魅惑的な笑い方で、ほんと罪だ。ただのメンバーに向けてじゃないのが分かってるから余計に心臓が痛い。鳴るな、五月蝿い。

『顔、赤いよ?』

「誰のせいだ」

クスクスと、いたずらっ子のように肩で笑う。おいおい、さっきのジュナはどこに行ったんだと、そのギャップにまたやられて。

ふらっと消えたかと思うと、二人分のコーヒーを持って帰ってくる。

『このお菓子美味しそうでしょ?一緒に食べようと思って買ったんだー』

幸せとはこの事だろう。ジュンが隣にいるだけで、何気ない話をするだけで、暖かくなる。テーブルにあるお菓子も、俺に微笑みかける顔も、何もかもが俺に甘い。

プリ小説オーディオドラマ