「……平和ねぇ…。」
緑茶を飲んで一息つく。ただ、平和だけれど。それ以上に静かだった。
「なんで……なんて、、あいつが居ないからよね。」
黒白の。魔理沙。あいつがいないから、こんなに静かで。真昼にこんなに静かなのは久しぶりだ。少しだけ、寂しい…なんて。
「は〜…。」
「結局来なかった…何かあったのかしら。」
暗闇の中で、虫の音に耳を傾けながら。吐息とともに本音が出る。少し肌寒い夜だった。
「……。あほらし、、。寝よっと。」
縁側から立ち上がり、霊夢は寝室に戻ろうとした。その時。
「……霊夢!」
向こうから。星の弾幕を箒の穂から散らしながらやってくる影。
「魔理沙?どうしたのよ。」
嬉しいのを隠して、霊夢はなるべく素っ気なく答えた。しかし、その笑みはすぐに固まる。
「……何それ。」
「牙が生えたんだぜ。」
「は?」
羽こそ生えてないものの、魔理沙の小さな口には八重歯より少し鋭い、舌でも噛んだら絶対血が出そうな牙が。
「……は、、?」
「なんでかは知らん。なんか生えた。」
「……実験失敗したとか?」
「最近は上手くいってた。それより霊夢。」
魔理沙は霊夢に詰め寄る。その流れで霊夢は押し倒された。なにがなんだかわからないまま、霊夢は魔理沙を見上げた。
「なに。」
「血。」
「はい?」
「私は今吸血鬼と同じ体質になってるらしくてな。霊夢、お前の血をくれよ。」
「ごめん何言ってるのか分からな……い?!」
言い終わらないうちに、魔理沙が霊夢の首に噛みつく。鈍い痛みと、暖かい液体が流れている感覚。
「痛っ、!何してんのよ?!」
「……ジュ……ル……。」
「ちょっ、、、、!」
暫くすると、魔理沙が起き上がった。
「ぷはっ!!……よし。」
「何がよしなのよ?!」
「霊夢を補充できたからな!これで大丈夫だぜ!」
「なっ……、、、。」
霊夢は何も返せなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。