その日を境に
からたは私の前に現れなくなった
別に死ぬわけでは無い
別に不自由なこともない
なのに…なんでこんなにも
寂しく感じてしまうのか
私にはよくわからない
でも、
だんだんと薄れてくのは
からたとの思い出ばかり。
でも、人にからたについて聞こうとすると
思い出すのは『秘密』たったそれだけの言葉
それでも、秘密は守りたいと思ってしまうから
いつしか私から笑みまでもが消え始めていた
何気なく見た庭の風景が
見るんじゃなかったと後悔するほど
私の未練を引き出してくる。
そんな時、医師からある事を言われた
…私の望んでいない言葉
よく考えれば当たり前のことだ。
始まりには終わりがある。
今回の終わりが退院なだけ。
まだ走れなかった足ももう
以前のように走れるようにまでなった。
でも…
下手すればもう2度とからたと会えなくなる
それは嫌だ
だけど…
治ってもなおここに居座る必要はない
病院の庭でぽつり独り言。
虚ろな目は涙で溢れて
きっと声も揺れていた。
…同じ事が二回もあるなんてね。
《聞かれていたなんて思わなかった》
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。