先輩が1年生の教室に来た。
最初の方は途切れ途切れにしか聞こえなかったけれど。
声が近づくにつれ、先輩が嫌がっている声が聞こえて。
一緒に居る人に引っ張られているだけだと軽く考えていた。
だから、まさか。
自分の名前を大声で呼ばれるなんて、予想もして居ない。
教室の入り口で、やり切った表情をする謎の人と。
慌てふためく先輩。
様子を見れば、困っているのはすぐに分かって。
ご飯を一緒に食べていた友達の視線も、
先輩の方に向けられている。
何とフォローしようか迷って居ると、先輩と視線が重なる。
助けを求めるような目をされて、無視するなんて出来ない。
友達に声を掛けてから立ち上がれば、
背中に感じる興味津々な視線。
ワタワタしている先輩が可愛くて、笑ってしまった。
初めて守りたいと思った人。
近づいて微笑めば、先輩は苦笑い。
頭を抱えている所を見ると、本当に困っていたらしい。
目が合っては逸らされるを繰り返していると。
いつの間にか先輩の肩越しに現れた『謎の人』。
先輩と正反対の性格に見えるせいか、警戒してしまう。
そして、とんでもない事をお願いされた。
見ず知らずの人と連絡先交換をする程、ガードは緩くない。
落ち込む『謎の人』に対して、先輩が冷静に切り込んだ。
的確な助言。
1人感動していると。
ようやく理解したらしい謎の人、以下『玲奈さん』は頷く。
そして、自己紹介が始まった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!