第36話

第35話 紗南side・奏汰side
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2021/01/30 07:27
埋まる座席、短くなる現実逃避の時間。
紗南
紗南
...どうしよう怜菜。どうしよう...
私は1番恐れた結果から、未だ立ち直れずに居た。
怜菜
怜菜
私が前に行った時に、
すり替えて来ようか?
紗南
紗南
......良いの?
こんな私を見ても、怜菜の返しは冷静だ。
怜菜
怜菜
まあ、普段は絶対しないけど...
紗南の頼みだからねw
私の気持ちを考えてくれた上での行動に。
今は、いつも以上に彼女が輝いて見える。
紗南
紗南
............っ怜奈ぁぁ...
よしよし、と頭を撫でられて。
紗南
紗南
ありがとう...お願いしちゃおうかな...
情けなくも親友の背中に抱き付いた時、彼はやって来た。
奏汰
奏汰
瀧野さん、よろしくね
もう逃げられない。
紗南
紗南
あっ、、うん...チラッ
怜菜
怜菜
.....フルフル(無理かな)
目線だけで怜菜と短い会話をした私が。
紗南
紗南
(だよね...)私こそ、よろしくね笑
そう悟った、瞬間だった。
.........................................。
時間は飛んで、放課後。
適当な理由を選んで瀧野さんを先に帰して居るであろう
彼女の親友、桧垣さんを待ちながら。
俺は、小さく深呼吸する。
怜菜
怜菜
...ごめん、お待たせ
あまり待たずして、待ち人は教室に戻って来た。
ただし、その瞳には。
怜菜
怜菜
...こんな所、紗南に見られたら
勘違いさせちゃうから
怜菜
怜菜
必要最低限、手短にお願いね
深い疑いと、少しの敵意が込められて居る。
奏汰
奏汰
.....分かった。
わざわざ呼び出したのは...
それでも、いくら蔑まれてでも。
俺の中には、どうしても聞きたい事があった。
奏汰
奏汰
俺がクジに細工した事、
桧垣さんなら気付いてると思ったから
瀧野さん関連なら特に察しが良い彼女が。
怜菜
怜菜
うん、知ってたよ
何故、クジ引きの進行を止めなかったのか。
奏汰
奏汰
...やっぱり。じゃあ何で.......
怜菜
怜菜
私が井上くんに与える最後のチャンスだから
その答えは、桧垣さんの洞察力にあった。
奏汰
奏汰
____え?
空いた口が塞がらない。
怜菜
怜菜
...紗南の事、好きなんでしょ?
放心状態になりかけて居る俺を置いて。
怜菜
怜菜
でも、その気持ちに気付いた頃には
傍に自分の知らない男子が居て
ずっと喋り続ける桧垣さんの口角が、少し上がった。
怜菜
怜菜
............焦ったんだよね?
そして、俺の心臓側の胸に爪をトン、と置いて一言。
怜菜
怜菜
紗南の特別が欲しいなら奪いなよ
怜菜
怜菜
建前もプライドも周りの評価も
全部捨てる覚悟で...力づくでも奪って見なよ
どんな心情も逃さないと言わんばかりの強い視線。
奏汰
奏汰
.......................っ
思わず目を逸らしたくなるけれど、負けるのは嫌だった。
怜菜
怜菜
...そうじゃなきゃ。私は井上くんを認めない
だから。随分ご無沙汰だった勇気を振り絞り、告げる。
奏汰
奏汰
.....言われなくても。
絶対取り返すよ。瀧野さんも、その心も
怜菜
怜菜
ふーん......お手並み拝見、だねw
俺の言葉に、桧垣さんは捉え切れない顔で笑った。

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