.....不思議。
後輩に慰められるなんて、情けないのもいい所なのに。
今は恥ずかしさよりも、安心感の方が勝ってしまう。
人特有の暖かさが、私に笑う余裕を取り戻してくれて。
勢い良く立ち上がると、まだ心配そうにしている後輩。
もう一度大きく頷き、彼に向かって笑って見せた。
こっそり和みながら、チラリとスマホを確認すると。
現在時刻18時10分。
かなり遅いが、今ならギリギリ大丈夫だろう。
1人で駅に向かおうとすれば、
可愛らしい笑顔でイケメンな事を言う彼。
自分の心臓がキュンとしたのが分かる。
ある日突然現れた天使のような後輩は。
かなり、あざとい系男子らしい。
でも今だけは、その虜になってしまおうかなと思えた。
すっかり日が落ちて、街灯が照らす通学路を並んで歩く。
たわいも無い話をしていると、
不意に黄瀬くんが言いにくそうに切り出した。
その声に返事をして、彼が口を開きかけたその時。
クラスメイトの声がして振り向けば。
飛び付いて来て、危うく倒れそうになる。
つい話し込んでしまっていると、
友達の視線が黄瀬くんを捉えて。
私の面倒臭い事になりそうな予感は的中。
彼女は黄瀬くんと私を見比べると、ニヤリと笑った。
とんだ勘違いをしだした友達に慌てて弁解するも、
ますます楽しそうにされるだけ。
とうとう誤解を解けずじまいで、取り残されてしまい。
黄瀬くんとの間に漂う気まずい雰囲気を打破するべく、
さっき言いかけていた事の続きを尋ねたけれど。
これ以上聞いてくれるな、と言う雰囲気があって。
踏み込めないまま、家まで送って貰った。
...母親に叱られたのは、言うまでも無い。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!