相変わらず絵文字が少ないLINEが送られて来たのは。
昼休み前の事だった。
『今日の放課後、空いてる?』
嬉しい反面。
自分からLINEする程の用件って何だろうと、不安になって。
その不安は。
...........的中する。
..............................。
彼との出会いは、市内で1番大きな図書館。
読書家だった友達の影響で、
自他ともに認める本の虫になった私は。
その日も、図書館に通って居た。
お目当ての本を見つけて、興奮気味に伸ばした右手。
本を手にした後に。
手を引っ込めようとして居る男の子と、目が合って。
気まずい沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、彼の方だった。
優しい声と笑顔で、私に話し掛けてくれて。
ゆったりとした足取りで去って行こうとするその手を。
反射的に掴み、その場に留める理由を作りつつ。
これからの関係に、どこか期待してしまう自分が居て。
心の奥深くまで、この恋に溺れて。
告白して貰えたときは素直に嬉しかったし、幸せだった。
...確かに、私の幸せはここにあったのに。
嫌われる事を無意識の内にしてしまったのか。
初めて彼の方から呼び出された用件が、別れ話なんて。
悲しみを通り越して、笑えて来る。
そのお陰で、返って冷静になれた。
取り乱さずに、微笑んで。
静かに、相槌を打つ。
この想いが名前も知らない女の子に負けた事が悔しくて。
最低なのは、私の方だと思った。
彼がその恋心に気付かなければ。
彼を気付かせた後輩さえ居なければ。
彼の気持ちと隣は、ずっと私の物だったのにと。
...思ってしまったから。
それでも最後まで、心優しい女の子に見られたくて。
汚い部分を覆い隠して、綺麗に笑う。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。