第29話

第28話 詩音side
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2020/06/27 16:05
相変わらず絵文字が少ないLINEが送られて来たのは。
詩音
詩音
(あれ、奏汰くんからLINE来てる)
昼休み前の事だった。
『今日の放課後、空いてる?』
詩音
詩音
(......珍しい...こんな急に誘って来るなんて)
嬉しい反面。
詩音
詩音
(...違う、違うよね)
自分からLINEする程の用件って何だろうと、不安になって。
奏汰
奏汰
ごめん、詩音
その不安は。
奏汰
奏汰
...別れて欲しい
...........的中する。
..............................。
彼との出会いは、市内で1番大きな図書館。
読書家だった友達の影響で、
自他ともに認める本の虫になった私は。
詩音
詩音
(今日は何か新しいの入ってるかな...)
その日も、図書館に通って居た。
詩音
詩音
(あ!あの作家さんの新刊...ラッキー)
お目当ての本を見つけて、興奮気味に伸ばした右手。
本を手にした後に。
手を引っ込めようとして居る男の子と、目が合って。
詩音
詩音
.............あ.....
奏汰
奏汰
.................
気まずい沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、彼の方だった。
奏汰
奏汰
...僕はまた別の機会に借りるので。
遠慮しないで借りて行って下さい。
優しい声と笑顔で、私に話し掛けてくれて。
奏汰
奏汰
.......じゃあ、これで失礼します
ゆったりとした足取りで去って行こうとするその手を。
奏汰
奏汰
...............?
反射的に掴み、その場に留める理由を作りつつ。
詩音
詩音
あ、えと...良かったら、なんですけど。
オススメの本、教えて貰えませんか
これからの関係に、どこか期待してしまう自分が居て。
心の奥深くまで、この恋に溺れて。
奏汰
奏汰
良かったら、僕と付き合って貰えないかな
詩音
詩音
.........っはい
告白して貰えたときは素直に嬉しかったし、幸せだった。
...確かに、私の幸せはここにあったのに。
詩音
詩音
(どうして、、急に?)
嫌われる事を無意識の内にしてしまったのか。
奏汰
奏汰
.......勝手で、ごめん。でも俺.......
初めて彼の方から呼び出された用件が、別れ話なんて。
詩音
詩音
(皮肉な物だなぁ...)
悲しみを通り越して、笑えて来る。
詩音
詩音
理由を、聞いても良い?
そのお陰で、返って冷静になれた。
奏汰
奏汰
.......もちろん。
詩音には、聞く権利があるから。
詩音
詩音
...ありがとう
取り乱さずに、微笑んで。
奏汰
奏汰
クラスの、隣の席の子...でさ。
奏汰
奏汰
最初は...守るべきクラスメイトって
思ってたんだけど
詩音
詩音
.........うん
静かに、相槌を打つ。
奏汰
奏汰
最近、あの子に近付く後輩を見て。
この気持ちが恋だって気付いた
詩音
詩音
(.......負け、ちゃった)
この想いが名前も知らない女の子に負けた事が悔しくて。
奏汰
奏汰
重ねてたんだよ、俺。
あの子と詩音を。最低だよな
最低なのは、私の方だと思った。
彼がその恋心に気付かなければ。
彼を気付かせた後輩さえ居なければ。
詩音
詩音
(...........その子さえ、居なければ)
彼の気持ちと隣は、ずっと私の物だったのにと。
...思ってしまったから。
詩音
詩音
.......分かった。
今まで、ありがとう。楽しかった
それでも最後まで、心優しい女の子に見られたくて。
奏汰
奏汰
俺も、楽しかった。...ありがとう
汚い部分を覆い隠して、綺麗に笑う。
詩音
詩音
(.........さよなら、大好きな人)

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