第10話

第9話
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2020/04/18 07:06
昨日は、どれくらい泣いたか分からない。
友達
紗南、おはよう。
.......目が腫れてるけど...大丈夫?
紗南
紗南
うん。大丈夫だよ。ありがとね笑
涙を必死に我慢しながら電車に揺られて。
家族に挨拶もしないで自室に鍵をかけて、ひたすら泣いた。
紗南
紗南
(冷やしたけど.....足りなかったかな)
このまま消えてしまえれば良いのにって、思ってしまった。
紗南
紗南
(だって.......もし、井上くんを
好きになっていなかったら)
紗南
紗南
(もう少し、幸せな恋が
出来てたかも知れない)
今更すぎる後悔。
紗南
紗南
(.......そう言えば.....私が井上くんを
好きになったのって、どうしてだっけ)
少し、昔の話をしよう。
紗南
紗南
(あれは確か.........)
入学してまだ間もない、約3年前の5月の事。
紗南
紗南
(どうしよう.....校外学習までに、
仲良い友達作らないと行けないのに.....)
今と同じく、いや、今以上に引っ込み思案だった私は、
完全に友達作りに乗り遅れ。
気付けば教室では、幾つかのグループが出来ていて。
紗南
紗南
(このままじゃ、行けないのに.....)
泣いたら行けない、変な子だって思われる。
唇を噛んで俯いて居た、その時。
奏汰
奏汰
コソッ.....僕と一緒に来て。
めっちゃ元気にしてあげるから
ヒーローみたいに、彼が現れた。
紗南
紗南
えっ、え、あ.....
泣きそうな弱い私を、連れ出してくれた。
奏汰
奏汰
ほら、バレる前に。行こう
その時にはもう。好きになっていたんだと思う。
紗南
紗南
.......その、ありがとうございます.....
声とか。
奏汰
奏汰
何で敬語?笑笑
クラスメイトなんだからタメ口で良いのに笑
振り向いた時の笑顔とか。
紗南
紗南
えと、ありがとうござい...じゃなかった。
ありがとう。...........
奏汰
奏汰
名前くらい覚えて欲しいな笑
僕は井上奏汰。よろしくね、瀧野さん。
私の緊張を解してくれようとした所とか。
語り出したらキリが無い。
紗南
紗南
(今思えば...井上くんって真面目なのに。
私の為に一緒にサボってくれたのかな)
あの時、連れて行って貰ったのは。本来は入れない屋上で。
奏汰
奏汰
ここから色んな景色が見えるんだよ。
海だけじゃなくて、山も見えてさ。
そこから街を見渡した井上くんの横顔は、
とても大人びて居て。
紗南
紗南
わあ.......凄く綺麗.....
住む世界が違うんだな、と直感的に思った。
奏汰
奏汰
僕の、お気に入りの場所。
瀧野さんにしか言ってないから、内緒ね?笑
紗南
紗南
.........はい。内緒、ですね
"2人だけの秘密"なのかなと思うと、少しドキドキして。
奏汰
奏汰
あ、また敬語。癖なの?笑
紗南
紗南
...そうなのかも知れないです.....
面と向かって出会ったばかりの人と話せて居る
自分に、驚きつつも嬉しくて。
紗南
紗南
.......どうして、連れて来てくれたんですか?
誰にも言えない、私の片想いが。
奏汰
奏汰
それはね、_________
紗南
紗南
...........!!!
始まったんだ。

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