昨日は、どれくらい泣いたか分からない。
涙を必死に我慢しながら電車に揺られて。
家族に挨拶もしないで自室に鍵をかけて、ひたすら泣いた。
このまま消えてしまえれば良いのにって、思ってしまった。
今更すぎる後悔。
少し、昔の話をしよう。
入学してまだ間もない、約3年前の5月の事。
今と同じく、いや、今以上に引っ込み思案だった私は、
完全に友達作りに乗り遅れ。
気付けば教室では、幾つかのグループが出来ていて。
泣いたら行けない、変な子だって思われる。
唇を噛んで俯いて居た、その時。
ヒーローみたいに、彼が現れた。
泣きそうな弱い私を、連れ出してくれた。
その時にはもう。好きになっていたんだと思う。
声とか。
振り向いた時の笑顔とか。
私の緊張を解してくれようとした所とか。
語り出したらキリが無い。
あの時、連れて行って貰ったのは。本来は入れない屋上で。
そこから街を見渡した井上くんの横顔は、
とても大人びて居て。
住む世界が違うんだな、と直感的に思った。
"2人だけの秘密"なのかなと思うと、少しドキドキして。
面と向かって出会ったばかりの人と話せて居る
自分に、驚きつつも嬉しくて。
誰にも言えない、私の片想いが。
始まったんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。