麗綺には誰か一瞬分からなかった。しかし透よりも多大なる権力を持っている人間を1人、思いついたのだ。
月永美鶴。元生徒会長だが教師からの信頼も厚い。までは普通だ。学力は全国で争うほど高く、運動能力もまた全国で争うほどだった。
しかし彼は周りにも優しく、周りの成績もグングンと上げていっていた。そのおかげかそのクラスにはスポーツ庁が調査にきたこともあった。
カーストは学校1と言っても全く違和感がない。まさに真の王だと思える程だった。
麗綺は透の性格の悪さをよく知っている数少ない人物の1人だろう。それに比べて美鶴はあまり表裏がないように麗綺には見えた。
多分人間だと思われてないんだろうと麗綺は確信した。透はそういうことを考えると麗綺は知っていた。
福本はクラスの中でも彼氏が途切れたことがない。しかし相当な悪女だった。気に入らないものはとことん虐め倒す。それが福本のやり方だった。
不知火は自分の席に戻った。麗綺も席に着いてそのまま読書をすることにした。
先程の悪い顔など思わせないくらい優等生の顔をした不知火。麗綺はチラッと見て本に視線を戻した。
興味ないくせに。不知火と趣味合わせたいからってそこまでする?と麗綺は思った。
しかしここで断ると恋愛感情があると思われる可能性があるとも考えた。
手を握られ麗綺の顔が強ばる。その瞬間に肩が張った事に気づいた。
その後、続々と人が集まり、また底辺カーストの日が始まった。美華は麗綺と話していたので机に着くまでは結構な時間が経っていた。
大体の人が集まった頃、美華が席に着いた。
ゴミが詰まった自分の机に美華が気づいた。
麗綺は驚いた顔をした。それは透も同じだった。
不知火が言ったように犯人は福本愛奈の様だ。
愛奈は下に見るように美華を見た。
その背後には決して入ってはいけない何かが見えたような気がした。
決して大きな声ではないが麗綺にはハッキリと聞こえた。そしてハッキリと分かった。
このクラスには上位カーストの中でもカーストが存在する。麗綺は美華が1番だと思っていた。しかし虎の威を借る狐だったようだ。
1番は愛奈だ。
愛奈の言動は嫌味にしか聞こえてこなかった。底辺カーストを敵に回しても意味が無いほどカーストは上のようだ。
そして不知火の視線に麗綺も気づいた。
愛奈は生徒会執行委員だった。それなりの権力もあるし。美華はそういう人前に出ることはしない人なので生徒会には興味がなかったが権力のなさが明らかになってしまったのだ。
愛奈は何事もなかったように席に戻った。
美華はゴミを捨ててまた、何もなかったように座った。
このクラスには平和がある訳では無い。悪徳を隠し通す人が多いだけだ。
麗綺はこの状況を苦とは思わなかった。どうせ自分には関係ないし。
チャイムが鳴った。今日は日課上、朝の読書がなく、朝の会が始まった。
やる気のない一堂の挨拶で朝の会が始まった。
一堂が放った言葉は想定外だった。
クラスの空気が凍りついた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。