第7話

*7 純白に見せかけた上辺の濁り
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2020/03/30 09:12
不知火 透
不知火 透
知ってる?このクラスのいじめ。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
いじめ…。
成宮が標的か。
不知火 透
不知火 透
まぁ、成宮はごく一例に過ぎない。
他にも…そうだな。香取とか隅谷とかも結構な被害にあってるぞ。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
でも、なんで私に頼んだ?
不知火 透
不知火 透
…俺がこの学校のトップに立つためだ。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
この学校?
なら、もうなってるじゃん。
不知火 透
不知火 透
いいや。上には上がいるんだよ。




 麗綺には誰か一瞬分からなかった。しかし透よりも多大なる権力を持っている人間を1人、思いついたのだ。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
月永 美鶴つきなが みつるか。
不知火 透
不知火 透
ピンポーン。



 月永美鶴。元生徒会長だが教師からの信頼も厚い。までは普通だ。学力は全国で争うほど高く、運動能力もまた全国で争うほどだった。
 しかし彼は周りにも優しく、周りの成績もグングンと上げていっていた。そのおかげかそのクラスにはスポーツ庁が調査にきたこともあった。
 カーストは学校1と言っても全く違和感がない。まさに真の王だと思える程だった。
不知火 透
不知火 透
あいつに勝たなければ。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
勝てるの?あんな性格いいやつに。



 麗綺は透の性格の悪さをよく知っている数少ない人物の1人だろう。それに比べて美鶴はあまり表裏がないように麗綺には見えた。



不知火 透
不知火 透
あいつも俺も同類だよ。
人前ではキャピキャピ媚び売ってライバルの前では闇出すんだよ。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
お前、私のことライバルだと思ってんの?
不知火 透
不知火 透
お前は例外。



多分人間だと思われてないんだろうと麗綺は確信した。透はそういうことを考えると麗綺は知っていた。


佐野 麗綺
佐野 麗綺
ていうか、成宮の机は誰の仕業?
不知火 透
不知火 透
んー、多分福本じゃない?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
あ、あの…。



 福本はクラスの中でも彼氏が途切れたことがない。しかし相当な悪女だった。気に入らないものはとことん虐め倒す。それが福本のやり方だった。



佐野 麗綺
佐野 麗綺
そろそろ人来てもおかしくないと思うんだけど。
不知火 透
不知火 透
それもそうだな。俺の本性バレたら嫌だし。




 不知火は自分の席に戻った。麗綺も席に着いてそのまま読書をすることにした。
成宮 美華
成宮 美華
あっ、不知火くん!
おはよー、
不知火 透
不知火 透
成宮さん。おはよう。



 先程の悪い顔など思わせないくらい優等生の顔をした不知火。麗綺はチラッと見て本に視線を戻した。
成宮 美華
成宮 美華
あっ、佐野さんだー。
今日は早いね、どうしたの?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
…目が覚めた。
成宮 美華
成宮 美華
へぇ。あっ、分かった!
佐野さんと不知火くんって付き合ってるんでしょぉ?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
んな訳あるか。
不知火 透
不知火 透
そうだよ。佐野さんとは最近お友達になったんだ。
成宮 美華
成宮 美華
そーなんだ…。じゃあ美華もお友達になってもいい?




 興味ないくせに。不知火と趣味合わせたいからってそこまでする?と麗綺は思った。
 しかしここで断ると恋愛感情があると思われる可能性があるとも考えた。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
いいですけど…。
成宮 美華
成宮 美華
ありがとう!じゃ、佐野さんよろしくね!



 手を握られ麗綺の顔が強ばる。その瞬間に肩が張った事に気づいた。
 



 その後、続々と人が集まり、また底辺カーストの日が始まった。美華は麗綺と話していたので机に着くまでは結構な時間が経っていた。
 大体の人が集まった頃、美華が席に着いた。
成宮 美華
成宮 美華
なに…これ。




 ゴミが詰まった自分の机に美華が気づいた。
 麗綺は驚いた顔をした。それは透も同じだった。
福本 愛奈
福本 愛奈
美華ちゃん。どうしたの?
成宮 美華
成宮 美華
愛奈ちゃん。これ、酷くない?
福本 愛奈
福本 愛奈
ふーん、そうかなぁ?




 不知火が言ったように犯人は福本愛奈の様だ。
 愛奈は下に見るように美華を見た。
 その背後には決して入ってはいけない何かが見えたような気がした。


福本 愛奈
福本 愛奈
まあ、美華ちゃん。
クラスの平和の為に先生に黙っておこっか。
成宮 美華
成宮 美華
な、なんで?
私、このクラスの人に虐められてるかもしれないんだよ。
福本 愛奈
福本 愛奈
もし、そのクラスの人が自分より上だったらどうするの?



 決して大きな声ではないが麗綺にはハッキリと聞こえた。そしてハッキリと分かった。
 このクラスには上位カーストの中でもカーストが存在する。麗綺は美華が1番だと思っていた。しかし虎の威を借る狐だったようだ。
 1番は愛奈だ。


福本 愛奈
福本 愛奈
もしかしたらあの5人みたいになっちゃうかもね。



 愛奈の言動は嫌味にしか聞こえてこなかった。底辺カーストを敵に回しても意味が無いほどカーストは上のようだ。
 そして不知火の視線に麗綺も気づいた。






不知火 透
不知火 透
福本さん。
福本 愛奈
福本 愛奈
ん?どうした?
不知火 透
不知火 透
明日生徒会の集まりだって。
先生が言ってた。
福本 愛奈
福本 愛奈
ランチミーティング?
不知火 透
不知火 透
多分そう。
福本 愛奈
福本 愛奈
うん、ありがとう。





 愛奈は生徒会執行委員だった。それなりの権力もあるし。美華はそういう人前に出ることはしない人なので生徒会には興味がなかったが権力のなさが明らかになってしまったのだ。
福本 愛奈
福本 愛奈
じゃ、成宮さん。
頑張ってね。



 愛奈は何事もなかったように席に戻った。
 美華はゴミを捨ててまた、何もなかったように座った。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
黙殺だ…。



 このクラスには平和がある訳では無い。悪徳を隠し通す人が多いだけだ。
 麗綺はこの状況を苦とは思わなかった。どうせ自分には関係ないし。


 チャイムが鳴った。今日は日課上、朝の読書がなく、朝の会が始まった。



一堂 忍
一堂 忍
はい、皆さんおはようございます。


 やる気のない一堂の挨拶で朝の会が始まった。
一堂 忍
一堂 忍
早速だが学校で起こったある出来事について話しておく。



 一堂が放った言葉は想定外だった。
一堂 忍
一堂 忍
このクラスにいじめがあるらしい。





 クラスの空気が凍りついた。

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