次の日、麗綺は学校にいつもより早く行った。まだ学校は好きではない。でも昨日の文化祭では嫌なことがありすぎて、少しマシに思えてきたのであった。それと昨日、片付けが明日あると言ってしまったため早く起こされてしまったから。これが1番大きな理由だろう。
麗綺は担任兼顧問(文化祭までほぼ姿を現さなかったが)の一堂に呼ばれた。それは少し真面目でいつもよりも脱力感がなかった為、真剣な話であることはすぐにわかった。
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一堂が言うにはこうだ。
あのミュージカルはとても面白かったらしい。しかしテロップが出た時にとても驚いたらしい。美華は国語が全く出来ないからだ。
美華は高校に入ったら赤点、いや青点を取るほどの国語の点数でいつも国語が足を引っ張っているらしい。
例えば何文字以上何文字以内と指定があっても一文で終わっていたり、読み取りが出来なかったり。本人曰く長文が嫌いらしい。
その美華があんな物語を書けるなんて思えない。そして最後の終わり方が雑なのに気がついた。そして下校途中の生徒の話を聞いたのだ。
「じゃじゃーん!美華から原文借りてきちゃいました!」
「えっ、いいなぁ!あれ面白かったよね。とくに前半」
「だよね。絶対最後サボったって」
手にはノートを持っていた。美華の物とは思えないほど地味なノート。
「あっ!ちっしーだ!なに?」
「やっぱ気になるんだね!あれ?美華のこと好きとか?」
「生徒と先生の禁断の恋!萌える~♡」
その女子生徒は素直にノートを渡した。一堂はそれを見た。そしてある事に気がついたのだ。この文字は絶対に美華ではない。美華は量産型ヲタクのような丸文字なのだが、この文字は少しとんがっているような文字だった。そして最後の少しは丸文字だったが。
「これ、最後時間なかった系だよね。ざっついもん」
「それな!先生もそう思うでしょ?」
「やっぱ気になんじゃん!しゃーない。1日だけだよ」
そうして一堂はその女子生徒から借りることが出来た。そして下校指導が終わった後に職員室に戻り、預かっていた教科ノートを1からその原文ノートを見比べていったのだ。
それで分かったのが、
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どちらの本になっても伝えたかったことがあった。
『人間の価値はちょっとした事で変わりそうだけど変わらない』
麗綺は教室の鍵とノートを受け取って教室に向かった。
自分から話してみます、とは言ったもののそんな自信なんてない。ほぼ美華で確定なんだがどこか信じたくないと思ってしまう。
これが友情の悪いところだ。こんなふうに沼に嵌められて、型から出たら不安を感じる。しかし捨てる気にもなれない。
教室の鍵を開けて荷物を出し、ロッカーにバックを置く。机の中にゴミは詰まってなかった。
麗綺は透がいることに気がついた。昨日も同じことがあったからそこまで驚かなかったが日本人形が部屋の隅にある時くらいの恐怖はあった。
透は教室に入って鞄を片付けていた。そして麗綺は気づいてしまった。
麗綺は透の机を見た。そこには
少し前の美華の時のようにゴミが詰まっていた。
透がいじめに遭うなんてありえない。麗綺はそう思っていた。しかし、その予想は全く違うものとなった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。