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2020/02/06

第8話

*8 大人は都合の良い時だけ味方
一堂 忍
一堂 忍
このクラスにいじめがあるらしい。



 この言葉は突然言い放たれ、クラスの空気が凍りついた。麗綺と透は同じ事を思った。

 一体誰がなんの為に、その事を先生に言ったのだろうか。


 上辺カーストはその上を恐れて報告は無理だろう。中間も上辺カーストを恐れている。
 だとすれば、底辺か他のクラスだ。
 麗綺は確信した。



一堂 忍
一堂 忍
まあ、先生も信じ難いことだ。
何か知っていることがあればいつでも言いに来るように。




 暗めの返事と共に朝学活が終了した。
 その後、クラスに騒ぎが広がった。
 誰が被害にあっているのか、誰が加害者なのかではない。───誰が密告した?
 それがクラスの話題だった。

 不安な顔の美華、怒りの顔の愛奈、何かに勘づいた透。そして関係の無い麗綺達底辺カーストだ。


 





 

 しかし、今の標的は美華だ。美華が報告したとしても変な話ではなかった。美華はそれに不安を覚えたのか机に詰まったゴミを捨て始めた。
 

 人間は醜いな、と麗綺は考えた。たかがクラスの上下関係で周りが見えなくなって、位置を確保する為に黙る。

 か わ い そ う。

 麗綺はその5文字が頭に浮かんだ。しかし上辺には上辺なりの考え方があるのだろう。
 麗綺はその感情を押し殺した。






 1限目が始まる前にその騒動は一旦終わり、教科担当が来る頃にはいつもの優等生クラスの雰囲気に戻っていた。


佐野 麗綺
佐野 麗綺
はぁ…




 このクラスには呪いが掛けられているのだろうか。
 麗綺はそう思った。この空間にいればいる程型にハマって行く気がする。麗綺はそれに吐き気がする程嫌だった。










 **************





 騒動の再開はあったものの無事に帰り学活まできた。麗綺はそこにひと安心した。
 しかし麗綺は見逃さなかった。今日1日、透の様子が変だったのだ。挙動不審という言葉が似合っていた。




一堂 忍
一堂 忍
はい、それでは帰り学活を終わる。
そして今から言う人は少しだけ残ってくれ。
菱田、石井、住吉、七野、佐野。
この5人だ。




 帰り学活が終わり、チャイムが鳴った。
 先程、一堂が読んだ5人は底辺カーストの5人だ。その中に当然ながら麗綺も入っていた。







 生徒が教室から出ていき、5人と一堂だけになった時一堂が口を開いた。
一堂 忍
一堂 忍
朝、言ったいじめのこと。
お前ら何か知らないか?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
なんで私達なんですか?
一堂 忍
一堂 忍
いつも冷静だし、1人でいることも多いだろ。
周りのことを見れてるだろ。



 麗綺は怒りの感情がこみ上がってきた。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
…んな、
一堂 忍
一堂 忍
佐野?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
ふざけんな!



「佐野さん?」


 菱田や七野が声をかけた。しかし麗綺は止まろうとしなかった。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
私達はこのクラスのせいで1人でいるんだ!
居場所をなくして隠れているんだ!
それに見向きもしないくせにこういう時だけ味方ヅラすんな!




 息を切らし全てを言い終わった頃、麗綺は我に返った。とても失礼で恥ずかしいことをしてしまった。麗綺は荷物を担いで早足で教室を出ていった。
 南館への渡り廊下へ向かおうとした時、声をかけられた。


不知火 透
不知火 透
随分叫んでたな、
佐野 麗綺
佐野 麗綺
不知火…。



 それは今日1日暗い顔をしていた透だった。
 
佐野 麗綺
佐野 麗綺
一堂先生が悪い。
こういう時だけ底辺利用するんだから。
…不知火はいじめの犯人分かってるの?
不知火 透
不知火 透
んーん。
正直な所、分かんないんだよ。



 麗綺は意外だった。透はクラス事情を全て知っていると思ったからだ。
不知火 透
不知火 透
福本とか成宮とかなんだろうけどさ。
そいつらが全部やってるとは限らないんだよ。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
ふーん、
上辺も大変だね。
不知火 透
不知火 透
ま、とりあえず一堂先生はほっとけ。
外面だけなんだし。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
それが1番だな。






 麗綺は部室に向かった。
 幸せの空間が待ち受けていると信じて歩みを進めた。部室の扉を開けると、
市村 奏恵
市村 奏恵
麗綺ちゃん!
遅かったね。来ないのかと思っちゃった。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
すみません。なんか先生に呼ばれちゃって。
加藤  宝童
加藤 宝童
そんなこともあるんだ。



 麗綺は荷物を退けて席に着いた。
 今日はネタ帳を作って持ってきたのだ。
 
市村 奏恵
市村 奏恵
あっ、そうそう。
夏休み終わったらさ、文化祭があるから今のうちに企画しようよ。
加藤  宝童
加藤 宝童
小説とかでいいんじゃない?
俺、書けないけど。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
文芸部らしいものはそれですよね。



 文芸部と言ったってただ話しているだけの雑談部だ。顧問も働かないし。特に賞も取らない。しかし最後の活動だ。派手にアピールしてみても良いと3人は思っていたのだ。
 でも文芸部ならではの物と言えば、と言われても思いつくのは小説だろう。
 
佐野 麗綺
佐野 麗綺
宝童先輩は人を呼び集めてくれればいいですよ。
市村 奏恵
市村 奏恵
うん、カースト上だしね。
加藤  宝童
加藤 宝童
上辺でーす☆
市村 奏恵
市村 奏恵
…殴るぞ?



 奏恵の暴走が始まる前に宝童が気づいたのでなんとか抑えられた。しかし宝童の力も制限があるだろう。宝童の学年には美鶴がいる。
 美鶴が学校一であれば流石の宝童も力は回らないだろう。



 とりあえず宝童に人集めを任せ、麗綺と奏恵は小説を書くことにしてこの日の部活動を終了した。