第4話

*4 白馬の悪魔様と荒らし屋さん
1,784
2020/02/11 04:08

 麗綺が教室に戻った頃には、透の邪悪さなど消え去っていた。麗綺は人間の愚かさに改めて気がついた。こんなドス黒い人間も普段愛想良く振る舞っていれば、なんの疑いもなくいいところをとって行ってしまうのだから。

 麗綺はしばらく睨みつけていた。すると透は気付いたようで話にけりをつけてからロッカーに荷物を取りに行く振りをして


不知火 透
不知火 透
このことバラしたらどうなるかわかってるよな。



 と呟いた。麗綺は言い返すこともできずただその場に留まっていた。少し悔しかったのだ。
 麗綺はあんなに千歌子を嫌っているのに責任を取れ、など第三者に言われては困る。
 麗綺は自身の存在をゴミのように扱われているような気がした。


 その時、麗綺はある1人の少女の視線に気がついた。その彼女の名前は成宮美華と言った。

 美華は上辺カーストの中でも上の方で男子生徒に大人気だった。そして美華は透を狙っていた。透の人気は根強く告白は月一以上はあった。

 しかし皆が恐れたのはこの女。美華は上辺カーストで可愛いという特性を持っている為それなりの権力はもっていた。虐めることなんて容易すぎたのだ。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
…めんどくさ。


 美華に目をつけられるほど面倒なものはないと麗綺は考えた。しかし、影響が少ないのも分かっていた。


 美華の普段の虐めはカーストを落とすことだった。麗綺はもともとカーストが下なのであまり意味がなかったのだ。つまり彼女が満足することができないので半永久的に行われることになるのを語っていたのだ。



 その日は怯えながら教室での日課を終了させた。






 *********



 そしてやってきた麗綺の至福のひととき。
 文芸部での活動時間がきた。麗綺は今日あった出来事が濃すぎていつもより早めに部室に向かった。話すことがたくさんあったからだ。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
おはようございます、…え?



 麗綺は唖然とした。部屋中に散らばる本、汚されたカーテン、そしてツンとくる匂い。
 一体なにがあったのか、全く分からなかった。ずっと立ち尽くしていると後ろから奏恵が来た。
市村 奏恵
市村 奏恵
麗綺ちゃん?ってえぇー!
何これ?誰の仕業?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
なんですかね?
でもこの匂い…なんかどこかで嗅いだことがあるんですよね。
市村 奏恵
市村 奏恵
じゃあ、麗綺ちゃん関連なのかな。
でも嫌がらせ?かな。



 麗綺と奏恵は悩んでいた。何故人気のない文芸部室でこのような嫌がらせをしたのか。誰かを狙っていたのか、はたまた無差別なのか。

 
加藤  宝童
加藤 宝童
なーにしてるの?
市村 奏恵
市村 奏恵
うわ!?宝童?
いつから?
加藤  宝童
加藤 宝童
さっきだけど…。部室どうした?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
なんか私が来たときにはこの状態で…。


 宝童も知らない様子だった。
 誰がなんの目的かも分からない。しかし顧問に言いつけたとしても解決はしないだろう。
 また被害があったら先生に言おうと3人で決めて片付けをすることにした。
市村 奏恵
市村 奏恵
麗綺ちゃんさ、今日図書室の前にいなかった?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
な!なんでそれを…。
市村 奏恵
市村 奏恵
本返し箱に借りた本を返しに行こうとしたら麗綺ちゃんが怒鳴ってて。相手誰だったの?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
…生徒会長の不知火です。
加藤  宝童
加藤 宝童
わ!超上辺カーストじゃん。
市村 奏恵
市村 奏恵
でもなんで怒鳴ってたの?


 麗綺はカーテンを取り外し終わったところで話し始めた。できるだけ暗い空気にはしないように笑おうとした。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
なんか母と付き合ってる人が不知火の父親らしくて、浮気で金無くなってるんだから責任取れ〜、って言われちゃって。



 麗綺は笑顔で振り向いたつもりだった。しかし奏恵と宝童の目には無理に笑っていることはお見通しだったのだ。奏恵と宝童は目を合わせお互いが同じ考えか確かめた。同じだった。

 奏恵と宝童は麗綺が自分が思っているほど感情がないわけではないということに気づいたのだ。麗綺は感情の色彩が豊かでそれを押し殺して生活しているのだと。それを勿体なく思う2人に気づかず麗綺はカーテンを洗いに行った。
 



 南館は水の汚さが目立っており、カーテンを洗っても意味があるのか分からなかった。しかし北館に行くのも面倒なので柔らかなホルンの音に包まれながらしっかりと洗った。
 部室に帰ろうとした頃にはクラリネット吹きの人が階段を登っていた。そこには美華の姿もあった。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
あいつ、吹部だったんだ。



 知らなかった事実に少々驚きながら部室に戻った。





 空気が入れ替わり本も棚に戻って綺麗になった部室の息を吸い込んだ。


市村 奏恵
市村 奏恵
カーテン何処に干そっか。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
つけたら乾きますかね。
加藤  宝童
加藤 宝童
それが1番だな。
変にシワつかないだろうし。



 宝童と麗綺が協力して部室のカーテンをつければ眩しすぎた日光が遮られて暖かい光が部室を包み込んだ。
市村 奏恵
市村 奏恵
ふぅー!落ち着くね。この空間。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
そうですね。
でも一体誰がこんなことやったんですかね。
加藤  宝童
加藤 宝童
奏恵、麗綺見たときに他に誰かいなかった?
市村 奏恵
市村 奏恵
誰もいなかったと思うんだけどな。
あっ、でも不知火くんと直後話してた子は見たよ。
加藤  宝童
加藤 宝童
そいつ怪しくね?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
なんでですか?
加藤  宝童
加藤 宝童
2人きりで話してたら嫉妬するだろ。
もしそいつが好きな人だったら。
それなら嫌がらせしたくなるかもな。
市村 奏恵
市村 奏恵
性格悪くない?
まあ、そういう女が近づいてくのか。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
上辺カーストの女はそんな奴ばっかだと思いますけどね。



 また上辺カーストに改めて呆れて部活動終了のチャイムが鳴り、校門へ向かった。
 奏恵と宝童は自転車通学のため、途中で別れて校門へ向かおうとしたとき、麗綺は誰かに腕を引っ張られた。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
いった、
不知火 透
不知火 透
佐野。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
なに?
帰りたいんだけど。



 透だった。こんな所を見られたらまた成宮に何かやられるかもしれない。適当な言い訳をつくって帰ろうとしたが腕は離されなかった。
不知火 透
不知火 透
電話番号とRimelのID、教えて。



 Rimelはいわゆるチャット連絡アプリで老若男女が使っている人気アプリだった。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
覚えてないんだけど。
電話番号だけなら…いいよ。
不知火 透
不知火 透
分かった。電話番号は?
佐野 麗綺
佐野 麗綺
080-………
不知火 透
不知火 透
オッケー。今日かけるから。
佐野 麗綺
佐野 麗綺
な、なんで?
不知火 透
不知火 透
お前は俺の言うこと聞くんだろ?
じゃ、今日の夜。




 透は自転車置き場に向かって行った。
 麗綺は誰かに見られていたら怖いので早足で自分の家に向かった。














































 誰かに睨まれているとも知らずに。

プリ小説オーディオドラマ