«翌日»
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ふと目を開ける。あれ、いつの間に寝てたっけ。
とりあえず、ぼやっとした頭で時計を見る。最初は視界もぼやけていたが、段々とはっきり針が見えた。
さっきまで2時限目だったはずなのに昼休みも終盤である。
お弁当を鞄から取り出そうとして、そこで始めて机の上にビニール袋が置いてあるのに気づいた。
ビニール袋…下っ端君のだろうか。
中を覗くと、そこには栄養ゼリーとスポーツドリンク。
パンじゃないから違うのかな…と思っている私に、そう声がかけられる。
声のする方を見ると藤村…ゴホン、藤沢さんが立っていた。気配がなさすぎる。
キョトンとした顔で私の方へ顔を向ける
フフ、と清楚に藤沢さんは笑う。
つい恥ずかしくなり、顔を染める。
淡々とそう言う藤沢さんがわざわざ嘘を言いに来たとは考えづらい。
これは本当に下っ端君が置いていったものなのだろう。
ふうん、そうなのか…
藤沢さんは短くそう答えるとくるっと私に背を向け自分の席へ戻っていった。
それにしても…
下っ端君、気遣い出来たんだ…
あの子なら問答無用で起こしに来るのかと思っていたから、意外に感じた
今度、何かお礼しよう。パンでも買っていって渡そうか。
どうしようかいろいろと考えながら、私はビニール袋から栄養ゼリーを取り出し、蓋を開け口に含んだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!