第19話

提案の行く末に
112
2019/12/11 18:31
その場の空気が固まる。


全員がその言葉を理解するのに10数秒を要した。

そして、やっと我に返った男が1人、絞り出したような低い声で言う。
秋葉 淩(アキハ リョウ)
秋葉 淩(アキハ リョウ)
何言ってんだ…?てめぇ
下っ端くん
下っ端くん
す、すいません!
ひぃ、と小さく呟き、顔を真っ青にしながら少年は頭を激しく下げる。
菊池 凪(キクチ ナギ)
菊池 凪(キクチ ナギ)
えーーっと…それってさ、姫がもう1人増えるってことでいいんだよね…?
そんな淩をスルーし(本人はそんなつもりではないのだろうが。)凪は問う。
下っ端くん
下っ端くん
あっ…はい、そうです!
少年が顔を上げ、コクコクと何度も頷くと、凪はパァアァアァア、と顔を明るくさせた
菊池 凪(キクチ ナギ)
菊池 凪(キクチ ナギ)
いいじゃんいいじゃん!面白そう!
僕さんせー!
秋葉 淩(アキハ リョウ)
秋葉 淩(アキハ リョウ)
なっ!凪!お前どういうつもりだっ!!
はいはーい!と手を上げる凪に、つかみかかる淩。
菊池 凪(キクチ ナギ)
菊池 凪(キクチ ナギ)
だってー、多い方が楽しくない?
そんな淩に臆することなく会話を続ける凪
秋葉 淩(アキハ リョウ)
秋葉 淩(アキハ リョウ)
のあ以外の女なんて媚び売りまくるクズしかいねーだろ!
下っ端くん
下っ端くん
なっ!違います!露草センパイはそんな人じゃありません!
秋葉 淩(アキハ リョウ)
秋葉 淩(アキハ リョウ)
アア゙!?てめーは黙ってろ!
下っ端くん
下っ端くん
すいません!!
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
露草……あ、
咄嗟に少年の口からでた名前に椿が反応する
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
もしかして、君があの時探してたっぽい屋上にいた女の子?
下っ端くん
下っ端くん
そ、そうです!その人です!
嬉しそうな顔になった少年と対照的に、一瞬のあの顔が歪んだ。

だが、次の瞬間その表情はなかったかのように消え去り、代わりに彼女の目には涙が溜まる。
有栖川 のあ(アリスガワ ノア)
有栖川 のあ(アリスガワ ノア)
そ、そんな…わ、私じゃダメだった…?
私、初めはあんなこと言っちゃったけど、今はすごく楽しいのに…
秋葉 淩(アキハ リョウ)
秋葉 淩(アキハ リョウ)
んなわけねぇよ!…おい!てめぇ!
下っ端くん
下っ端くん
い、いいいや、そういうわけじゃないんです!あの、姫といっても幹部の方々以外のメンバーのだけ姫でいいんです!もちろん今の姫もメンバー全員で全力で守りますし、幹部の皆さんは新しい方の姫は放っておいて全然構わないので!!
涙目で俯く姫を見ながら早口でそういう少年。
秋葉 淩(アキハ リョウ)
秋葉 淩(アキハ リョウ)
ああ!?なに勝手抜かしやがって…
美空 緋彩(ミソラ ヒイロ)
美空 緋彩(ミソラ ヒイロ)
いいんじゃなーい
またもや突っかかりそうになった淩を、緋彩が止める。

淩はバッ!っと声の主の方を睨むが、当の本人はパクパクと美味しそうにおにぎりを頬張っていた
秋葉 淩(アキハ リョウ)
秋葉 淩(アキハ リョウ)
緋彩!てめえまで何いってんだ!
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
俺も別にいいと思うけど。
予想外の言葉に、淩はもう言葉を失う。


さらに追い打ちをかけるかのごとく、声が響く。
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
会ってみればいいじゃん。彼の推す姫候補に。
下っ端くん
下っ端くん
…へ!?
秋葉 淩(アキハ リョウ)
秋葉 淩(アキハ リョウ)
…は?
菊池 凪(キクチ ナギ)
菊池 凪(キクチ ナギ)
あ、それいいね!行こー!
美空 緋彩(ミソラ ヒイロ)
美空 緋彩(ミソラ ヒイロ)
面白そーだし僕も行くよ♪
軽く提案をした椿に続き、乗り気な2人が賛成の意を示す。
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
これで幹部全体の3/6の賛成が取れたわけだ。あとの3人は?
秋葉 淩(アキハ リョウ)
秋葉 淩(アキハ リョウ)
俺は反対だ!のあ以外の姫なんてありえねぇ!
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
優斗は?
波多野 優斗(ハタノ ユウト)
波多野 優斗(ハタノ ユウト)
…どちらでも構わない。
静かに返事をする。
これで幹部5人の意見は取った。

残すはボスである睡蓮だけだ。

全員の視線が自然と彼に集まる。

現時点で賛成の人数の方が多いが、トップの彼の意見でこの件はほぼ決まったも同然となる。


あたりは緊張感につつまれ、静まり返っていた。

彼は誰とも目を合わせようとせず、どこか一点を見つめ、何かを考えていた様子だったが…
一条 睡蓮(イチジョウ  スイレン)
一条 睡蓮(イチジョウ スイレン)
…会うだけな。
ふいに口を開き、いまだにオドオドとしている少年の方を向き、そうポツリと言った。
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
高嶺 椿(タカミネ ツバキ)
よし。じゃあ君。明日、第三校舎屋上、昼休みに。
そう決まるや否や、椿はたんたんと事を進めた。
下っ端くん
下っ端くん
あ、ありがとうございます!絶対に連れていきます!
少年はそれを聞くと、先程の不安げな表情と打って変わって嬉しそうな表情に一変した。
そして転げ落ちてしまうのではと心配になるほどブンブンと頭を下げ、走り去っていった。

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