その場の空気が固まる。
全員がその言葉を理解するのに10数秒を要した。
そして、やっと我に返った男が1人、絞り出したような低い声で言う。
ひぃ、と小さく呟き、顔を真っ青にしながら少年は頭を激しく下げる。
そんな淩をスルーし(本人はそんなつもりではないのだろうが。)凪は問う。
少年が顔を上げ、コクコクと何度も頷くと、凪はパァアァアァア、と顔を明るくさせた
はいはーい!と手を上げる凪に、つかみかかる淩。
そんな淩に臆することなく会話を続ける凪
咄嗟に少年の口からでた名前に椿が反応する
嬉しそうな顔になった少年と対照的に、一瞬のあの顔が歪んだ。
だが、次の瞬間その表情はなかったかのように消え去り、代わりに彼女の目には涙が溜まる。
涙目で俯く姫を見ながら早口でそういう少年。
またもや突っかかりそうになった淩を、緋彩が止める。
淩はバッ!っと声の主の方を睨むが、当の本人はパクパクと美味しそうにおにぎりを頬張っていた
予想外の言葉に、淩はもう言葉を失う。
さらに追い打ちをかけるかのごとく、声が響く。
軽く提案をした椿に続き、乗り気な2人が賛成の意を示す。
静かに返事をする。
これで幹部5人の意見は取った。
残すはボスである睡蓮だけだ。
全員の視線が自然と彼に集まる。
現時点で賛成の人数の方が多いが、トップの彼の意見でこの件はほぼ決まったも同然となる。
あたりは緊張感につつまれ、静まり返っていた。
彼は誰とも目を合わせようとせず、どこか一点を見つめ、何かを考えていた様子だったが…
ふいに口を開き、いまだにオドオドとしている少年の方を向き、そうポツリと言った。
そう決まるや否や、椿はたんたんと事を進めた。
少年はそれを聞くと、先程の不安げな表情と打って変わって嬉しそうな表情に一変した。
そして転げ落ちてしまうのではと心配になるほどブンブンと頭を下げ、走り去っていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。