«数日後»
1時間目が始まる前。
ここ最近ずっと教室内に響き渡っていた声はなくなった。
その静かな時間、ずっと私が望んでいた、机に突っ伏して目を休めていた。
あぁ…至福
ふと名前を呼ばれ、顔を上げるとそこにはクラスメイトの女子生徒がいた。
えっと、名前は…ふ、ふじ…
確かそんな名前だったはず。
明るめの茶髪の彼女は何も言ってこないので、きっと合っていたのだろう
藤村さんは先日私の机に手をかけてきたような人柄ではなく、どちらかと言えば遠くから見つめて頬を染めるような人だ。
だから、そんな彼女から話しかけてくるのは、少し意外だった。
興味本位で聞いてみる
はっきりと言った…
すこしびっくりしたが、残念。
サラリと告げたが、藤村さんは特に驚く様子もなくそれだけ言った
藤村さんはホントに聞いてみたいだけだったらしく、ショックを受けたようには見えなかった
やんわりと笑いながら、藤̶村̶藤沢さんは去っていった
«昼休み»
いつもなら「センパーーーイ!!」という声が響くのだが、もちろん聞こえてくることはない。
今日はオムライスなので、少しウキウキとしながら机にお弁当を広げた。
スプーンですくい、口の中に入れる。
んん!美味!
お弁当に入れる時は、いつもみたいにトロトロの卵じゃなくて、少し固めのほうがちょうどいい。冷めてしまうからね。
はぁ、せっかくいい気分でオムライスを食べてたのに、こんな幻聴が聞こえるなんて…
幻聴じゃない!
思わずスプーンを落としてしまった。
私が見た光景は、実にありえないと思っていた事だからだ。
なんと、下っ端くんが走って私の机の前まで走り、急ブレーキをかけて停止した。
唖然。
なんで来やがったこいつ
…空いた口が塞がらない
まじかー…
相変わらずのいい笑顔で元気に答える。
ちくしょう腹が立つこの笑顔
絶対話聞いてなかったな
もう一度最初から説明しようとしたが、下っ端くんに遮られ、そんなことを言われた。
この子はホントによめない。突拍子のないことを言うな
幹部や姫に合えと?
ありえないと言いたげな顔で驚く下っ端くん。
いや、そんな顔したいのはこっちだ。
普通に考えて、いい人が不良をやるか。
偏見だと言われても構わないが、不良がいい人なら、それはもう不良じゃない。
絶対に関わりたくないのに。
「会って見てください!」「嫌」というやり取りを昼休み中ずっと繰り返して終わった
私の少し覚悟した決別は意味をなさなかったようだ。
むしろ下っ端くんのやる気が上がったらしい。
私と下っ端くんの攻防はまだまだ続く
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。