第5話

決べ…?
127
2019/10/07 12:20
«数日後»
1時間目が始まる前。

ここ最近ずっと教室内に響き渡っていた声はなくなった。

その静かな時間、ずっと私が望んでいた、机に突っ伏して目を休めていた。
あぁ…至福
藤沢さん
藤沢さん
ねぇ、露草さん
ふと名前を呼ばれ、顔を上げるとそこにはクラスメイトの女子生徒がいた。

えっと、名前は…ふ、ふじ…
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
何?藤村さん
確かそんな名前だったはず。

明るめの茶髪の彼女は何も言ってこないので、きっと合っていたのだろう
藤沢さん
藤沢さん
最近こないね、あの可愛い子
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
下っ端くん?
藤村さんは先日私の机に手をかけてきたような人柄ではなく、どちらかと言えば遠くから見つめて頬を染めるような人だ。

だから、そんな彼女から話しかけてくるのは、少し意外だった。
藤沢さん
藤沢さん
多分…その子。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
なんで?
興味本位で聞いてみる
藤沢さん
藤沢さん
えっと、あの子なんだか一途でいい子じゃない?それで可愛くてイケメンで…目の保養だったからさ…
はっきりと言った…

すこしびっくりしたが、残念。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
もう来ないと思うよ。これからずっと
藤沢さん
藤沢さん
そっか
サラリと告げたが、藤村さんは特に驚く様子もなくそれだけ言った
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
…ガッカリしちゃった?
藤沢さん
藤沢さん
ううん。聞いてみただけだから。
藤村さんはホントに聞いてみたいだけだったらしく、ショックを受けたようには見えなかった
藤沢さん
藤沢さん
ありがとう。露草さん
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
いいえ。
藤沢さん
藤沢さん
あと、私の名前藤村じゃなくて、藤沢だよ
やんわりと笑いながら、藤̶村̶藤沢さんは去っていった
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
…え

«昼休み»
いつもなら「センパーーーイ!!」という声が響くのだが、もちろん聞こえてくることはない。
今日はオムライスなので、少しウキウキとしながら机にお弁当を広げた。

スプーンですくい、口の中に入れる。

んん!美味!

お弁当に入れる時は、いつもみたいにトロトロの卵じゃなくて、少し固めのほうがちょうどいい。冷めてしまうからね。
下っ端くん
下っ端くん
露草センパーーーイ!!
はぁ、せっかくいい気分でオムライスを食べてたのに、こんな幻聴が聞こえるなんて…
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
…え!?
幻聴じゃない!
思わずスプーンを落としてしまった。

私が見た光景は、実にありえないと思っていた事だからだ。
なんと、下っ端くんが走って私の机の前まで走り、急ブレーキをかけて停止した。
下っ端くん
下っ端くん
センパイ!姫になってください!
唖然。

なんで来やがったこいつ
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
なんでいるの?
下っ端くん
下っ端くん
え、なんでって…センパイを姫に誘うためですよ!
…空いた口が塞がらない
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
…最近来てなかったよね?
下っ端くん
下っ端くん
あ…すいません。風邪ひいて、学校休んでました。朝は、溜まってた宿題だしに行ってました
まじかー…
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
あのさ…こないだの話って覚えてる?
下っ端くん
下っ端くん
はい!
相変わらずのいい笑顔で元気に答える。

ちくしょう腹が立つこの笑顔
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
何しに来たの?
下っ端くん
下っ端くん
姫になってくださいって言いに!
絶対話聞いてなかったな
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
あのさ…もう姫いるよね?
下っ端くん
下っ端くん
分かってますよ!だから、露草センパイ、いちど姫とREDの幹部に会ってください
もう一度最初から説明しようとしたが、下っ端くんに遮られ、そんなことを言われた。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
…は?
この子はホントによめない。突拍子のないことを言うな
幹部や姫に合えと?
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
いや、嫌嫌嫌。絶対いや
下っ端くん
下っ端くん
何回嫌っていうんですか。なんでですか!皆さんいい人ばかりですよ!
ありえないと言いたげな顔で驚く下っ端くん。

いや、そんな顔したいのはこっちだ。

普通に考えて、いい人が不良をやるか。

偏見だと言われても構わないが、不良がいい人なら、それはもう不良じゃない。
絶対に関わりたくないのに。

「会って見てください!」「嫌」というやり取りを昼休み中ずっと繰り返して終わった
私の少し覚悟した決別は意味をなさなかったようだ。

むしろ下っ端くんのやる気が上がったらしい。
私と下っ端くんの攻防はまだまだ続く
下っ端くん
下っ端くん
未来の姫なんですから!ぜひ今のうちに会いましょ!
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
勝手に決めないでくれるかな

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