朱雀高校 奥庭
そこは中庭とは別に作られた隠された庭。そこの存在を知ってるものは少なかった。そこは近年朱雀高校を拠点としているカラーギャング、REDのたまり場にされていた。
どこからかそんな情報を手に入れ奥庭に足を踏み入れた一般生徒は数知れず。
存在を知っても、近寄ることの出来ない場所として扱われた。
そこは、教師であっても立ち入ることは許されない。
…そんなウワサが立たれている場所では、傍から見れば眉目秀麗な青年たちと、1人の女子生徒が食事を取っていた。
何を隠そう、この青年たちこそがREDの幹部たちであり、そんな青年たちの中にだった一人でいる少女が有栖川のあ。REDの姫だった。
そう言って弁当を片手にのあに笑いかけるのは、美空緋彩くん。
どこか小悪魔を想像させる可愛らしい顔立ちだが、今はそんなことは感じさせない、天使のようだった。
緋彩くんの真横で正面の青年におかずを催促するのは菊池凪(きくち なぎ)くん。
少し毛先を遊ばせたような髪型は寝癖のようにも見える。素直で年上も年下も気にしないようなまさに純粋な少年のような子。
そんな凪くんにおかずを差し出たのは波多野優斗(はたの ゆうと)くん。
アジア系のハーフで、褐色肌がまた色っぽい。寡黙で謎、というのが正直な印象。少し怖いけど、メンバーとの接し方を見ると根は優しいのだと思う。
その様子を見ていた、彼らと反対側に座る見るからにガラの悪そうな男が、隣の爽やかな男にそう言うも、ばっさり切られる。
秋羽淩(あきは りょう)くん。見た目通り、幹部の中では1番喧嘩っぱやい。
そしてその隣の爽やかな方は高嶺椿(たかみね つばき)くん。
幹部の中では参謀のような存在で、情報処理を担当している。
そんな騒がしい中、黙々と一人でお弁当を食べている切れ長の目に血のような赤い髪色のかれこそが、REDのトップ。ボスの一条睡蓮(いちじょう すいれん)くん。
これがいつもの光景。
だからこそ、本来いるべきでない存在が際立つ。
緋彩くんと椿くんが同じ方向を向き話しかける。それに続くようにして、ほかの幹部も一斉にそちらを見る。
…睡蓮くんを除いて。
睡蓮くんはご飯を食べるのを辞めない。気にもとめなくていいことだと判断したのだろう。
そこには男にしては少し身長が低めで、自分で声をかけたくせにおろおろとしている1人の男子生徒がいた。
おどおどとした態度が気に入らなかったのか、淩くんはその少年を睨みながら低い声で怒鳴る。
少年はさらに怯え、冷や汗をかいていた。
少年に助け舟を出した緋彩くんの質問に、少年はしどろもどろになりながら答える。
ふと思い出し、少年を指さす。
私に続き椿くんも思い出す。
今にも殴りかかりそうな淩くんを慌てて止め、席に座らせる。
どうすればいいのかわからずまたおろおろとし始めた目の前の少年に、今度は優斗くんと凪くんが助け舟を出す。
うじうじとした態度が嫌いな淩くんに促され、少年は大きな声でそう言い切った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。