第6話

ある日のすれ違い
118
2019/10/07 12:20
下っ端くん
下っ端くん
露草センパーイ!
4時間目終了のチャイムがなって数十秒後、望まずして聞き慣れてしまった声と共に下っ端くんが走ってくる。

日に日に来るのが早くなってるのは気のせいだろうか…
藤沢さん
藤沢さん
あれ、また来たんだね。彼
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
嫌なんだけどねぇ〜…
藤沢さん
藤沢さん
そんなこと言うの露草さんくらいだよ
フフ と笑う。

いや、笑い事じゃないんだけどなぁ
下っ端くん
下っ端くん
REDの姫になってください!
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
このやり取りももはや挨拶だ。
下っ端くん
下っ端くん
ふっふっふ!そう言うと思って今日はその対策法を考えてきました!
いつも通り受け流そうとしたが、この日の下っ端くんは普段とは違った。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
え?
下っ端くん
下っ端くん
じゃじゃん!
そういった下っ端くんの手には個別包装されたクリームパンが握られていた
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
…くりーむぱん
下っ端くん
下っ端くん
いや、そうだけど!ちがいます!
何が違うのだろう。袋にも「悪魔のクリームパン」と書いている
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
あ、悪魔のクリームパン?
下っ端くん
下っ端くん
そうそう、それですよ────って、違いますよ!?そんな細かいとこ俺気にしませんからね!?
下っ端くんは、ノリツッコミを覚えた
下っ端くん
下っ端くん
もう…これは!賄賂わいろです!
私がなかなか正解を答えれず、しびれを切らした下っ端くんが大きな声でそう言う。

いや、賄賂って…お前…
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
へー、そうなんだ
下っ端くん
下っ端くん
なんと!これを渡すと露草センパイがREDの姫になってくれるんですよ!
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
違うよ?
どこ情報だそれ。色々とおかしい。
下っ端くん
下っ端くん
なので、受け取ってください!
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
え、いらない…
下っ端くん
下っ端くん
なんでですか!?
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
むしろなんで受け取ると思ってたの?
クリームパンを押し付けあう下っ端くんと私。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
私、お昼ご飯はお弁当派だから。
下っ端くん
下っ端くん
俺は購買のパン派です!
聞いてない!


…てか、こんなに押しあってたらクリームパンつぶれない?
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
下っ端くん。クリームパン潰れるよ?
下っ端くん
下っ端くん
大丈夫です!
あれ、これ私への賄賂だよね?

いや、受け取らないけどさ。

どちらもなかなか折れず、そろそろクリームパンの袋が破裂するんじゃないかと私が危惧していると、
下っ端くん
下っ端くん
…分かりました。クリームパンは諦めます。露草センパイはクリームパン嫌いなんですね。次は別の持ってきます
やっと下っ端くんが引いてくれた
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
いや、そう言う問題じゃないんだけど
下っ端くん
下っ端くん
何がいいですか?
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
話聞いて!?
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
何もいらないから!諦めてくれる?
…そんなこんなで、下っ端くんの賄賂作戦は失敗に終わった。

«次の日»
今日も朝から下っ端くんに押しかけられ、それ以外は何事もなく平穏に一限、二限と過ごしていた。

次は移動教室なので、私は廊下を歩いていた。

あーめんどくさい。
なんでいちいち移動しないといけないんだろう

そんなことを考えながら、廊下から窓の外を眺める。

いい天気だなぁ…こんなときに授業というのも、もったいない気もするな─────


きゃーーーーーっ!!
…大体何かは分かるがとりあえず声の下方向へ目線を移そうとすると、


今REDの幹部が登校して来てるってよっ!!


一目でいいから見たい!
そう言いながら私の横スレスレ…いや、若干ぶつかっていたが、数人の女子生徒が前へ走っていた。

もう少し強かったら転んでいたぞ…

そしてやっぱり。

ていうか、え?今登校?もう三限目だよ?
前を見ると、たいそうな人だかりが出来ていた。多分あそこにいるんだろう。

通行の邪魔だと思わないのかな…

このまま無理やり突っ切るか、遠回りして下の階に降りていくか。


ふと立ち止まり、考える。

…めんどくさいけど降りた方が得策かな
早々に決断を下し、歩いてきた道を引き返し階段を降りる。

そしてそのまま教室に向かおうとしたら…


きゃーー!ヒイロくーん!こっちみてー!


きゃーーーー!!!


可愛い!かっこいい!
先程と似たような歓声が聞こえる。思わず足を止める。

あれ…ここ下の階だよね。
思わず周りを確認する。

間違いなく、ここは2階で、目の前には人だかりがあった
なんで分裂してるんだ。

最悪だ…と思いながらも、上の階の人だかりよりはマシなので、仕方なくここを通ることにした。

一定の速度を保って歩き、人だかりに入る。
美空 緋彩(ミソラ ヒイロ)
美空 緋彩(ミソラ ヒイロ)
あれー…わざわざみんなと離れたのに意味なかったなー
どうにか向こう側にたどり着こうとしていた時、人だかりの中心からそんなつぶやきが聞こえた。

興味本位で、チラ、とそちらの方を見る。

人の頭の間から見えた、明らかに周りと違う顔立ちをした1人の男は、困ったように笑っていた。

なるほど確かに容姿は整っている。

だがそれがどうした。どのみち通行の邪魔になっていることに変わりはない。

少し睨んで、心の中でそんなことを思いながらその男の横を通り過ぎようとした時。

これだけ間に人がいるのに、偶然視線があった。

え。


きゃーーーっ!今、私の事みた!?


そんなわけないでしょ!私によ!


ヒイロくーん!!
瞬間、私よりその男に近い女子が騒ぎ出す。


…気の所為だな。タイミング良すぎて心の声が声に出してしまったのかと思った。
視線が合うだけでそんな騒ぐとか…訳がわからない。
ようやく人だかりから脱出し向こう側にたどり着いた私は、そのまま移動教室へ向かった。
美空 緋彩(ミソラ ヒイロ)
美空 緋彩(ミソラ ヒイロ)
…睨まれた……?
その男がそう言いながら、不思議そうに私の方を見ていることなんて知らずに。

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