第4話

中庭
201
2019/10/06 06:12
中庭は確かにのどかでとてものんびりできる所だった。
風もちょうど良くふき気持ちが良い。
この場所、気に入ったな
下っ端くん
下っ端くん
センパイ!REDの姫になってくれませんか!
…下っ端くんがいなければなぁ
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
しつこい
下っ端くん
下っ端くん
なんでですか!
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
ならないって何度も断ってるでしょ
下っ端くん
下っ端くん
なって欲しいんです!どうしても
真面目な顔でアンパンを頬張りながらそう思う。

…アンパンにいちご牛乳って合うか?
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
嫌。
私はお弁当の卵焼きを半分に箸で切り、切り分けたひとつを口に運びながら、断る。
下っ端くん
下っ端くん
えぇ〜…
しゅんとした顔で悲しそうな表情のままうなだれる。

心做しか子犬のようなしっぽと耳が見える。


ほかの女子が見ればキュンとするのだろうなぁと思いながら、もう1切れの卵焼きを食べる。

んん、我ながら美味しい。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
他の人は知らないけど、下っ端くんだってイケメンなんだから他の子誘えば簡単についてくるって。
下っ端くん
下っ端くん
イケ…っ
顔がかぁぁ と赤くなる。ピュアか。
下っ端くん
下っ端くん
ち、ちがいます!そういう問題じゃないんですよ!
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
彼女もすぐに出来るよ。
下っ端くん
下っ端くん
なっ…!
予想外の言葉だったのか、赤い顔がさらに赤くなる
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
あれ?もしかしてもういた?
下っ端くん
下っ端くん
い、いませんよ!からかわないでください!
これでもかと言うくらい首と手を振り、否定する下っ端くん。

からかったつもりはないけど。

ほかの女子が見ればこの姿にだって胸がキュンとなるだろうし。

そんなことを考えながら自分の口に小さめのアスパラのベーコン巻きを放り込む。

ん…味付け濃かったかな…
下っ端くん
下っ端くん
話をそらさないでくださいよ!
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
そんなことないよー
ちっ、バレたか
«グゥゥゥゥ»

大きな腹の虫の音がする
下っ端くん
下っ端くん
あっ…
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
…アンパン1個じゃそりゃ足りないでしょ…
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
何か買ってくれば。私も食べ終わるのもう少し時間かかるし。
下っ端くん
下っ端くん
うぅ…すいません、買ってきます。
下っ端くん
下っ端くん
あっ!でも、今のすきに逃げないでくださいね!
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
ちっ…
下っ端くん
下っ端くん
逃げる気だったんですかぁ!?
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
大丈夫大丈夫。逃げない逃げない。
下っ端くん
下っ端くん
…待っててくださいね。すぐに戻りますから
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
はいはい
そう言うと、下っ端くんは購買へ走っていった。

元気だなぁ…
…ホント、めんどくさい事になったなぁ
下っ端くん
下っ端くん
戻りました!ゼェ…ハァ…
はやっ!…男子高校生の食欲恐るべし。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
…そう言えばさ、REDって集まったりしないの?昼休みとかさ
下っ端くん
下っ端くん
ありますよ!
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
…?そっち行きなよ。なんで行かないの?
下っ端くん
下っ端くん
え、じゃあ露草センパイも…
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
行かないけど。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
てかさ、姫ってもういるでしょ?
下っ端くん
下っ端くん
はい!いますよ!
元気にはっきりと言う

…え、いや、はいって…
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
じゃあその人でいいじゃない
下っ端くん
下っ端くん
露草センパイも姫になってください!
何を言っているんだろうこいつは。

思わずまじまじと下っ端くんを見つめる
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
あのね、姫は1人で十分だとおもうよ。だってそんな2人3人もいたら、守るそっちだって大変でしょう?
まず姫が既にいるのにまた別の人が姫になればその人は1番目の姫と全校の女子が敵になるだろう。

そんなことくらい、少し考えれば分かることを…
下っ端くん
下っ端くん
大丈夫です!なら、幹部やボス以外の姫になればいいです!
なんだそのややこしい関係

変に妥協するな
下っ端くん
下っ端くん
きっと露草センパイならみんなに好かれますよ!
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
好かれたくない
バッサリと切り捨てながら私は水筒のお茶を飲む。

私的に麦茶が1番美味しいんだよなぁ…
下っ端くん
下っ端くん
僕はセンパイになって欲しいんです!
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
私はなりたくないです
下っ端くん
下っ端くん
そんな…!なんでですか?
私何回も言ったと思うんだけどこの話聞かないやつはそんなの全部忘れてんのか
なんで、ねぇ…

ふ、とベンチの横で木陰を作ってくれている木を見上げる。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
一言で言えば、めんどくさいから。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
学校内にギャングのメンバーがいても別になんとも思わない。姫がいたっていいんじゃない?その不良たちが他のグループと喧嘩したってどうでもいいの。ただ、私に害がなければ。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
私は、ただ平穏な毎日が送れてればそれでいい。
少し冷たかっただろうか。その不良グループのメンバーの下っ端くんにとっては酷かもしれない。

だがこの意見だけは譲れない
下っ端くんの方へ向き直る。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
だから姫になるないし、今後もなるつもりもない
下っ端くん
下っ端くん
………
無言のまま、うつむいている。

私は小さくごちそうさまでしたと言い、お弁当をしまうと、ベンチから立ち上がる
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
下っ端くんも、私にこんなに時間を割かないほうがいいよ。君の時間がもったいない。
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
露草 桔梗(ツユクサ キキョウ)
何を言われても、私は姫にはならないから。
そう吐き捨てるようにいうと、私はそこから立ち去る。
こんなにはっきり拒絶するのは初めてだろうか。

これでもう下っ端くんは私のところに来ることはなくなるだろう。

だがそれが私のため、ひいては彼のためだ。

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