やばい、やばいやばいやばい!
私は1人、唇を血が吹き出そうなくらい噛み締める。
乗り気でないとはいえ、幹部の皆が姫候補とやらに会う計画をたててしまった。
そのきっかけは、昨日のランチタイム中にやって来た少年。あの少年は、前の第一校舎屋上でも見た。
しかも、その時彼が「露草センパイ」と言っていたのは、あの意味不明女で、ランチタイム中に会ってほしいと言っていた姫候補のことも、「露草センパイ」と言っていた。
そこから、あの女がREDのメンバーを使って姫の座を奪おうとしてることは違いないだろう。
きっと純真無垢であろう彼は、脅されたか唆されたかで無理矢理言わされたに違いない。
逆らえなかったんだ、きっと。
そんなことを考えながら時計を見上げた。
今頃、皆とあの女が第三校舎屋上で会っている頃だろう。
もし、万が一、あの女が媚びて、皆が騙されたとしたら。
そして、姫の座を奪われたら。
そんなこと考えたくもない。
親指の爪をギリッ、と噛む。
あんな女に渡したくない。
せっかく、掴み取ったのに。
それから、私は考える。
どうすればこの地位を守れるか。
いろいろな方法が頭で浮かんでは却下され、また浮かんでは却下されていく。
そんなとき、パッとひとつの案が思い浮かぶ。
危険は伴うけど、これなら…
希望を見出し、詳細を考えつくだけ考える。
あの女の入る隙はなくなる。
────・・・結局、私はその計画を実行することを決意した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!