”あなた、もっと強くなって帰ってくるから”
待って、、、、
行かないで、、
…………はぁ
最近また見だした夢。
小さい頃、
お隣さんにすごくかっこいい男の子が居て
私は小さいながらもその子に恋してて
その子がいじめられてる時
いつも助けて、
自分より下の子に助けてもらうなんて
駄目だね。
なんて笑うんだ
でもその子、、、
高校に上がる時に
上京する。
って東京に行っちゃった
”あなた、もっと強くなって帰ってくるから”
って好きな笑顔で笑いながら言って…
一瞬で私の前から消えた
私、まだ覚えてるから
だから早く帰ってきて、、
今どこで何してるかなんて
分かるわけがない
9年前のことなんて
きっと向こうは忘れてる
会えるかな。って思って
私も上京してきちゃって……
すぐ会えるなんて
そんな上手い話ないのに
バカだな私、、
そう呟いた声は
ひとり暮らしの部屋に虚しく響いた
私の仕事は
イベントを計画したりする仕事
色んなアーティストさん達の
打ち合わせとか会議に出たりする
…寂しいな
って思いながらも家を出る
〈亜嵐side〉
もうすぐで始まる
2回目のアリーナツアー
今日はその打ち合わせがあって
メンバーも気合いが入ってる
……あの子…か
あの子。っていうのは
俺が小さい頃隣の家だった子
上京する時に離れちゃって
今でも忘れることができなくて
メンバーには話したことあるからこうやって気にかけてくれる
めちゃくちゃ騒がしくなった隼
”また会う”
また会ったら、あの子はまた
亜嵐くん!!
って言ってくれるかな?
また騒がしくなってきた楽屋の中で
もしあの子が
まだ俺を覚えてくれているなら。
また会って、
ずっと好きだったよ。
って言いたい
って俺、、、めちゃくちゃキモい……
なんて一人で考えてたら
ガチャッ
皆夢見るなー
とか心の中で思いながら
会議室に向かう
会議室の前に立って
少し身だしなみを整えてから
ドアを開ける
会議室の中に入って
最初に目があった女の人
その人を見て足が止まる
そんな龍友くんの声も頭に入ってこなくて
ずっとその女の人を見る
するとその女の人が
急に立ち上がって
…………………あなた………、?
名前を聞いた瞬間
バカみたいに心臓が騒ぎ出す
涼太のお陰で我に返って
そう言って勢いよく頭を下げたその人。
…………まさか…な
長机で四角に形作られていて
皆それぞれ椅子に座る
俺は大体、いつも端っこ
前は、、、あなたさん、
前を見たら目が合って
普通の顔で打ち合わせを始めて
やっぱ違うか。
メンバー皆も俺が様子おかしかったからか
俺をチラチラ見てたけど
打ち合わせが始まったら真剣になる
ステージの模型を見せながら
言うあなたさん
俺が全く喋らなかったからか
隼が話を振ってきて
そう言って笑ったあなたさんは
小さい頃のあの子と被って
というか、
一つ一つの動作が被って仕方がない
最初見た時
周りに纏わるオーラがすごく被って
笑う時に出来る目の下の大きな涙袋も
髪の毛を耳にかける動作も
全てがあの頃と重なって
ずっとドキドキしてる
それからの話し合いも
自分でも分かるくらい上の空で
たまに我にかえって
また上の空になって
その繰り返し。
リーダーなのに何やってんだ
って思うけど
こんなの上の空にならない方がおかしい
気付けばもう終わっていて
まだ資料を整理してるあなたさんを見たら
勝手に足が動いて
携帯を出して交換して
お礼言った後
急に恥ずかしくなってから
足早に会議室を出る
楽屋に戻って
いや、ん?じゃねぇし…笑
メンバーがずっと俺のことで話してて
俺もよく分かんなくなってきたけど
でも確かに分かったのは、
あの頃の気持ちが出てきた気がして
今日一日心臓がうるさかったのは
俺はそれだけ恋してたんだ。
ってことで
本人かは分からないけど
久しぶりに感じた
胸の苦しさに
少し嬉しくてどこかもどかしかった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。