今の自分はNakamuさんの服を着ている。理由的にはアイクさんと我々軍のコネシマさんが似てると言ったからだ。もしこれで気付かれなかったら一卵性の双子か何かかな。
「watoさんNakamuさん連れて何しに行ってたの?」
アイクさんは俺の服を着たNakamuさんに話しかける。アイクさんは気付いていないようだ。
「Nakamu!飯食いに行こうぜ!」
「はい!」
声真似るの難しいな。けどまぁ出来なくはないか。
「watoさん?」
「あ、ごめん。ちょっと考え事」
「珍しいですね」
珍しいとは何だアイク。まぁ取り敢えずコネシマさんとご飯を食べに行こう。なんかスパイみたいで楽しいな。
「コネシマさん行きましょうか」
「おう!」
「Nakamu!……とコネシマさんか」
「おぉ!きりやんさん!Nakamu借りとるで」
借りてるって物みたいな言い方だけどまぁコネシマさんに悪意はなさそうだから癖なのだろう。直した方が今後の為にもなりそうだが。
「きりやんも一緒にご飯食べる?」
「……お前本当にNakamuか?」
もしかしてバレたか?完全にバレるまでは本人だと言い切るか。
「え?何言ってんのきりやん、俺がNakamuじゃなかったら誰なの?」
「そうだよな……Nakamuごめんな。後一緒にご飯食べるよ」
なんとか乗り切った。きりやんさんは勘が鋭いのだろうか。もしくは目がおかしいのか。
「今Nakamu俺の目がおかしいとか思ってるよな?なぁ?」
「だって俺を俺じゃないって言ったんだよ?おかしいと思うしかないでしょ」
「まぁまぁ飯はよ食おうぜ!冷めたら美味しくなくなるやろ」
これはもしやバレないのだろうか。いやでもバレないといろいろ困るな。
「皆様、パーティーを楽しんでいらっしゃいますでしょうか?さて、今からミニゲームを開始したいと思っているところでございます」
運営軍のコンタミさんがそういうと、ステージにブルーベリー色の防具を身に付けたばどきょーさんとらっだぁさんが現れた。
「今回のミニゲームは隠れるのも戦うのもありの鬼ごっこです。範囲は運営軍基地の敷地内、簡単に言えば鉄格子で囲まれているのでそこから出なければ問題ないです」
コンタミさんに続いてレウクラウドさんは説明を話していく。前回は確かアスレチック大会だったが今回は鬼ごっこらしい。
「ら民からブレスレットを貰うと思いますが、それにはGPSが埋め込まれております。位置情報は全て、運営軍の技術屋さんの緑色のところにいきますのでご注意を」
ら民からNakamuと書かれた水色のブレスレットを受け取る。これ大丈夫かな。
「制限時間は五十分。捕まったら会場に戻って下さい。一分後、鬼がスタートします。鬼ごっこスタート!」
下手な行動は止めておいた方が良さそうだ。取り敢えず会場から出よう。
次々と確保された人の名前がアナウンスで呼ばれていく。きりやんさんとコネシマさんと今は逃げており、見つからないように行動しているが、見つかるのは時間の問題だろう。
「Nakamuどうする?」
「取り敢えず見つからないように逃げよう。隠れるのもありだけど見つかった時に逃げられない」
「そうやな。けど、よっぽどのことがない限り体力が無くなることはないと思うんやけど、もしもの事を考えて温存はしておきたい」
コネシマさんが言うことは一理ある。鬼が何をしてくるかわからない以上、下手に動くのは危険か。
「なら今は此処で潜伏していよう」
今居る場所は巨大図書室だ。構造が複雑な為、此処に潜伏しておいた方がいいだろう。
「Nakamuさ、なんかやっぱいつもと違う気がする」
「そうかな?いつもと同じだと思うけど」
「やらかし上手のNakamuが確かに今は居らん気がする」
流石に雰囲気で怪しまれるか。でもNakamuさんの雰囲気なんて全然わかんないから諦めるしかないか。
「鬼が来る」
その瞬間、右かららっだぁさんが現れコネシマさんをタッチする。俺ときりやんさんは間一髪のところで左に逃げる。
「すみませんコネシマさん」
図書室から出て、近くにあった時計を見ると一時間を遠に過ぎていた。
「臨時ニュースを申し上げます。生き残りが多いためサドンデスを開始します。鬼は常に居ますので気を付けて戦闘していただけるといいかと思います。武器は至るところに設置してあるためご自由にお取り下さい。では皆様、引き続きお楽しみ下さい」
これは流石にヤバいのではないだろうか。Nakamuさんの戦い方なんて雰囲気よりもわからない。無理ゲーに無理ゲーを重ねないでほしい。
「Nakamu、一時的に協力体制とる?」
「そうだね。二対二ならいけそうだ」
きりやんは弓矢、俺はシャベルを拾い、目の前に居る我々軍のシャオロンさんとゾムさんの二人に向かって構えた。
「Nakamuってシャベル使うんか!同じやなぁ!」
力強い攻撃で一瞬バランスが崩れそうになる。けどこれぐらいならまだ耐えられる。
「俺は絶対に負けない!」
シャオロンさんのシャベルを押し返し、首にシャベルを当てる。
「シャオロン、きりやんOUT」
アナウンスでシャオロンさんときりやんさんの名前が呼ばれる。しっかりと緑色さんに監視されているのか。
「Nakamu、殺ろか」
「残念ながらゾムさんさようなら」
「え!?あっ」
ゾムさんの後ろにはばどきょーさんが居た。正直ゾムさんと真っ正面から戦っても勝てる自信はなかったので鬼に助けてもらった形になった。
「さて、Nakamuさんまだ生きとるんやっけ……まぁ最後まで生き残れたらええな」
俺は独り言を呟きながらも警戒して、軍基地内を歩いていく。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。