『えっ...?どうして「いいからっ」
「ここっ」
自分の隣をポンポンと叩く彼女
言われたとおりそこに座ると
「じゃあ、乾かすね!」
『あっ、えっ?』
そういうことだったんだ...
いきなりで驚く俺に構わずドライヤーの電源を入れる
するとあなたさんの手が俺の髪に触れた。
なんだろ...
ドキドキが...
そのあと少し沈黙が続き、あなたさんが口を開いた
「山田さんの髪、私とおそろいだっ。」
最初はどういう意味か分からなかったけど
同じ香りがするって言いたかったんだと思う。
『うん、おそろいだね。』
俺がそう言うと
彼女がふふっと笑ったような気がした。
________
「はいっ、終わり〜」
『ありがと。』
いつも思うけど
あなたさんと話していると
時間があっという間に過ぎてしまう
『じゃあ、次は俺ね。』
場所を交代して、次は彼女の髪を乾かしてあげる。
長く経ったせいか
半分ほど乾いている状態にあったあなたさんの髪。
茶色で肩につくくらいのミディアムヘアからは
俺と同じシャンプーの甘い香りが
ふわりと漂っていた。
「私、こういう恋人っぽいことしたことないの。」
“だから今すっごく幸せ!”
と喜びを噛み締める彼女
本当にかわい...
『俺も幸せだよ。』
恥ずかしかったから少し小声で呟いた。
ドライヤーの音でかき消されていますように。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。