昼休み、伊月にそう伝えた。
いろんなことを考えて、考えて、もう決めた。
伊月とはもう終わりにするんだ。
記憶をなくしている人間ともう1回付き合って、同じセリフを言われて、っていうのは想像以上に辛かった。
自分勝手で、本当に伊月には申し訳ないと思う。
デートもキスもして、もうこれ以上深めてしまったら、
もし伊月の記憶が戻って拒絶された時、私は立ち直れなくなってしまうから。
いつか別れることが決まってるなら、このあたりで終わらせたい。
児童公園のフェンスのところで、伊月を待つ。
突然の呼び出しを不思議に思っているだろう伊月は開口一番尋ねてくる。
質問と噛み合ってないことを言い出した私を怪訝そうに伊月が見つめる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!