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第1話

first.
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2018/03/29 06:24
伊月
部活終わってから、学校近くの児童公園に来て欲しい
昼休みにそう言われて、児童公園まで行くと、伊月はもう来ていて、入口のフェンスにもたれかかって待っていた。
美宇
ごめん、遅くなった
部活長引いちゃって
嘘。部活はいつも通り終わった。
ここに来るのが嫌で、ゆっくり来た。
伊月
別にいいよ
美宇
それで、どうしたの?
そんなのもう、見当はついてる。
聞きたくない。
なのに何で、急かせるようなこと言っちゃうんだろ
聞きたくない、お願い、やめて、、、
伊月
話があって...
俺たち、もう別れよう
一瞬で、全身が冷えていくような感覚。
こんな状況でも、頭のどこかで、やっぱりそうだよねと冷静に考えてる自分もいる。
数ヶ月前から、すれ違うことが多くなった。最近なんか、話すこともなかったから喧嘩すらしなかった。

上手くいってないのわかってたよ、それでも、「別れる」って言葉持つ衝撃は強くて。
今まで感じたことのないような、失望感が襲ってくる。

美宇
私たち、最近上手くいってないもんね

悲しい、別れたくない、そんな気持ちを隠したくて、可愛げのない冷たい返事をしてしまった。
引き止めたってもう、伊月は私のことが好きではないんだろうから、意味が無い。

好きだったら、別れなんて切り出さないし、前に女の子と歩いてるのも見たから。しらないふりしてたけど、私たちの関係は終わっていたようなものだった。
私はそれでも、好きだったけど。
今にも涙が出そうだけど、絶対伊月の前では泣きたくないから、我慢しないと。
伊月
.....うん。だからさ、お互いのためにも、別れよう
ああ、言っちゃった。
もうこれで別れることになっちゃうんだね。
美宇
....そうだね。別れよう
伊月
じゃあ、そういうことで。
もう俺行くわ、じゃあね
最後にそう言い残して、伊月が私に背を向けて、歩いていく。
引き止めたいけど、もうそうすることも叶わない。呆然と背中を見つめることしかできないことしか出来ない。
そして、気がつくと伊月は見えなくなった。

堪えていた涙が零れる。
秋の冷たい風だけがひゅっと音を出して通り過ぎていく。
この世に1人だけになったような孤独感と喪失感が涙と一緒に溢れてくる。


失って初めて、その存在の大きさを知るってどこかで聞いたけど、本当だったんだ。
もう、あの幸せな時間に戻ることは出来ないんだ。

そして、翌日。
学校へ行くと、いつも早く来ているはずの伊月はいなかった。
休みかな、気まずいからちょうどいいや。
そう思っていた。
友達の真奈から、伊月が事故に遭ったことを聞くまでは。

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