今日は学校の空調設備の点検で、部活停止になっている。
普段は部活であそびに行くのは難しいから、今日がチャンス。
本当に久しぶりの伊月からのお誘い。
伊月から見れば、初めてのことだろうけど。
嬉しくて、抑えようとしても声が弾んでしまう。
学校を出て、2人で歩く。
待って、こっちの道は...
よかった...
まっすぐ行った道の途中には、あの児童公園がある。なんとなく、行ったらダメな気がした。
欲しいわけでもなかったけど、コンビニでジュースを買って、少しだけ飲む。
さっきまで冷蔵庫に入ってたジュースはこの季節に飲むには冷たすぎる。
ジュースをカバンに入れて、両手を擦る。
本当に飲みたいわけじゃなかったから適当に選んだのが間違いだったな。
そう言ったかと思うと、伊月はぱっと私の手をとって握った。
突然のことに声が出ない私。
伊月は一瞬手を離して、そして、指を絡めてきた。俗に言う恋人繋ぎ。
恥ずかしくて、もぞもぞ動かそうとすると、ぎゅっと握る力が強くなった。
ずいぶん前、初めて手を繋いだ時のことを思い出す。あの時も、離そうとしたら強く握られたっけ。
離れないでって言われてるみたいで、すごく嬉しかった。愛されてる感じがしたというか、うまく言えないけど。
そのまま、2人でモールまで行って、カフェに行って、最後に一緒にプリクラを撮った。
付き合うのは2回目だけど、プリクラ撮ったのは初めてですごく嬉しかった。
ずっと、大事にしたいと思った。
別れた後も。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!