悪気のない涼の質問に私達は動きが止まる。
でも、そんなに嫌がるようなことではない。
だって、事実なんだから。
私と紅春は血の繋がりがない。
紅春は私が10歳の時、家族と山にキャンプに行った際に一人でいるところを見つけたのだ。
確か話を聞いても自分の名前と年齢だけしか言わなかったような気がする。
取り敢えず、家で引き取ることになって引き取りが長くなって今の状態。
涼と一緒に部屋に行くと、入るなり後から入って来た涼がドアの鍵を閉めた。
冷たい声で言い返すと、涼は優しく微笑んだ。
そして、その涼の笑みに込められた意味が私には理解出来なかった。
それだけを言うと、涼は鍵を開けた。
私に背を向け歩こうとしたところで振り返ると口元に手を当て、いつの間にか手に持っていたナイフを見て笑う。
言い残すと、涼は部屋を出て行ってしまった。
何をしたかったのかはいまいち分からないけど、取り敢えず柚輝に注意した方がいいのと、涼が歪んで狂った性格の人だと言うことだけは理解した。
そんなことを考えていると、お菓子鉢を持った紅春が部屋に入って来る。
紅春とお菓子を食べながら騒いだ夜、私は空をぼんやりと見つめていた。
きっと、あと少しで満月になりそうな月。
確かこの満月はブラッドムーンになるとかテレビで見たんだっけ…。
世の中の人が『ブラッドムーン』と言う言葉を聞いて真っ先に思うのがあの狐達のことだろう。
涼はあの頃の…"スズ"の記憶は無いの?
蒼士達と騒いだ頃のあの子は…何よりも身近な人達を大切にしていたあの子は……
今の私にはこれしか言えない。
そして、今の私にはそんな思い出は関係ない。
自らの手で仲良くしてもらったクラスメイトを殺し少しでも早く楽にするだけなのだから。
そろそろ便乗して殺し始めてもバレない。
命令で殺されただけと思う。
手に持つ銃を触り、改めて誓う。
すると、ベッドに投げられていたスマホから2回の着信音が鳴り響いた……。
11/05 00:00
To:GM
title:DEATH GAME
命令に背いたため出席番号03 大谷祐基、出席番号08 楠木隼颯、出席番号24 藤森龍希に罰を与える。
11/05 00:00
To:GM
title:DEATH GAME
※これは桜華高校3年1組の生徒が対象です
※24時間以内に命令に従いなさい
※命令に背いた場合には罰を与えます
※途中棄権は認めません
命令6:出席番号が小さい順に男女各5名ずつで人気投票をしろ。男女それぞれ最下位の者に罰を与える。また、最下位の者に投票した者にも罰を与える。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!