第10話

墓の秘密
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2021/05/03 20:06
暁月 紅玻
僕は暁月あかつき紅玻くれは。狐に仕える火ノ神家に並ぶ者です。
碓氷 澪
だから、スズのこと知ってたんだ。
暁月 紅玻
うん。てか、僕がスズさんと一緒に情報集めしてるんだけどね。
若槻 翔馬
動きは火ノ神、探しは暁月。それが狐に仕える2つの家系の主な行動だ。
碓氷 澪
…狐の正体ってなんなんです?
私はふと浮かんだ疑問を口にする。
すると、先生は意外にも流そうとせずに少し真面目な顔で説明してくれた。
若槻 翔馬
まぁ、話すと長くなるが、昔に先祖がやらかしてその罪を子孫に押し付けたんだ。でも、実際はただの勘違い。片方の狐は上手く逃げたけどもう片方は捕まって飼い殺し人生。子が産まれたら親は解放される。人間に化けれるように、誰かを助けることが出来るように…そんな2つの家系の思いが狐を生み出した。不思議な力を持つ狐をな。それ以来、狐は全ての人間を守り続けてんだ。で、その片方の家系であり、子孫達の中でも血が濃いスズは政府に捕まったってわけ。
碓氷 澪
スズを捕まえて得することって何かありますか?
若槻 翔馬
俺達の行動範囲が狭まる。狐の正体を知っていいのは俺と暁月家と火ノ神家とあとは天皇くらい。世間にバレたらいけない。だから、狐の行動範囲を政府に握られてると何かとダルいんだ。
暁月 紅玻
もうすぐ、僕達の勝ちですけどね。
若槻 翔馬
まぁな。
暁月 紅玻
研究所の人達はどうします?
若槻 翔馬
全員跡形もなく…でいい。
暁月 紅玻
了解。
碓氷 澪
あ!あのお墓の話!
若槻 翔馬
墓?あぁ、友哉のか。あれは狐の恋人の墓だ。まぁ身近な奴で言うと室星は狐と友哉の子孫ってこと。
碓氷 澪
……だった、ですよね?先生?
若槻 翔馬
…そうだったな。
碓氷 澪
その友哉って人はどんな感じの人だったんですか?
若槻 翔馬
う〜ん…また出てくるけど室星にそっくりな奴だった。自分を犠牲にしてまで誰かを救おうとしたやつ。だからこそ、友哉は狐にとって大切なひとだったんだろうな。
ビーーーーッ!ビーーーーッ!!
碓氷 澪
わっ!!
突如鳴り出したアラームに私は大声を出す。
先生は大音量に少し嫌そうな顔をしたあと冷静に紅玻に向かって「何があった」と聞く。
暁月 紅玻
最悪、政府がこの街自体を潰しに来たみたいです。現在は駅で真っ直ぐ狐の家に向かっています。
若槻 翔馬
チッ…本格的に日本の過去ごと消そうとしてんのか…。おい、スズ!そこにいるか!
スズ
いるよ〜
テレビ画面が切り替わると、スズが水色の画面をバックにテレビ画面に映っていた。
スズ
このアラームは緊急事態かな?
若槻 翔馬
アホ、緊急事態だから呼んでんだよ。今の瑠璃の位置は?
スズ
んっと〜…桜苗ちゃんと外で開催されてる駅前人気スイーツの食べ放題に行ってますね。
暁月 紅玻
うわっ、こんなときに馬鹿じゃん…
若槻 翔馬
お土産に俺達にも買って来いって伝えとけ。
スズ
いや、呼ぶんじゃないの?
若槻 翔馬
あれは俺も食いたい。
碓氷 澪
大人なのに…
若槻 翔馬
別にいいだろうが。
スズ
あっ!!今、ここに蒼翔が来ようとしてるんだった!そっちの対処を先に!
若槻 翔馬
はぁ!?手間増やすなよ!!
スズ
しょうがないじゃん!
若槻 翔馬
だりぃな……狐は何処だ?
スズ
定位置にいる。
若槻 翔馬
10分以内にここに来い、そう伝えろ。
暁月 紅玻
街の方は?全部開けたら子孫が殺される可能性がある。
若槻 翔馬
安心しろ、狐は2匹いる。呼ぶのは片方だけで十分だ。それまでは虎徹に場を頼む。で、紅玻。お前は万が一のために友哉の墓を守っとけ。
暁月 紅玻
了解です。
紅玻が勢いよく外に飛び出して行くと、庭で寝ていた虎徹と呼ばれた大きな獣が起き上がって紅玻の後を追った。
若槻 翔馬
まぁ、どうにかなんだろ。
碓氷 澪
何か大変なんですね…
若槻 翔馬
拳銃も刀も法に触れる物沢山あるし、紅玻もスズもハッキングで十分法に触れるからな。
スズ
私の存在自体が違法だよ。
スズが苦笑いを浮かべる。
でも、作ったのは先生だから最終的には先生に罪は被ることになるんじゃないかって普通に思った。
スズ
軽〜く犯罪組織だよね。
若槻 翔馬
でも、日本を守ってるのは俺らだ。
スズ
ほんと!まっ、何でもいいけどさ。それじゃ、私は日向ぼっこしてるからそっち行くね。
若槻 翔馬
ああ。
スズ
あ、澪ちゃんはショーマといれば取り敢えずは生き残るから大丈夫!もし、澪ちゃんが死んだらちゃんとそっちにショーマが行くようにしとくから!
碓氷 澪
う、うん…
若槻 翔馬
碓氷が死ねば、守れなかった責任で俺を殺すと。
スズ
勿論!だって、澪ちゃんは私の大切な友達の幼馴染ちゃんだからね。
ふふっ、と口元に手を当てて微笑むとスズはテレビからいなくなった。
若槻 翔馬
取り敢えず、碓氷をこの街から出す。ついてこい、隣の駅まで送る。で、お前のクラスにいる子孫に会ったらこう言え。「何かこの先で事件が起きたらしいからその英雄殺しの家には行けない。」って。来た瞬間絶対に死ぬから来させんな。
碓氷 澪
分かりました。
若槻 翔馬
あとはこれを渡しとくから家に帰ってゆっくり読め。
先生は大きめの紙袋を乱暴に私の斜め掛け鞄の中に入れると外に出た。
遠くの方で発砲音が聞こえる。
先生がポケットから犬笛を取り出して、吹くと虎徹がやって来た。
若槻 翔馬
こっちに来れたならアイツが来たな?虎徹、コイツを隣の駅まで頼む。
尻尾を振りながら首を縦に動かすと、虎徹は私を乗せて建物の上に飛び移る。
そして、どんどん野坂から離れたのだった…

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