暗闇の中、みんなの笑顔が見える。
暗闇の中、みんなの声が聞こえる。
…でも、それは段々消えていき、怒鳴り声や鳴き声に変わってしまった。
そんな状態でも、人を守ろうとする声。
馬鹿みたいな声だね…。
私は届くわけもないのにその声に手を伸ばす。
ねぇ、待って…まだ消えないで……
私を ───
神崎舞さん。
やっと貴方の気持ちが分かった。
教科書なんかじゃ恐ろしさは学べない。
体験者から聞くからこそ、自ら体験するからこそ、その恐ろしさを知ることが出来るんだ。
人間は汚い。人間は醜い。人間は最低。
『友達』なんて言葉を使って人を騙し、自分のいいように利用する。身を守る盾にする。
嫌なことの巻き添えに使う。
でも、君は違う。
誰よりも正しくて、誰よりも友達想い。
そして、誰よりも馬鹿。
生きるのは君のはずだった。
私が生きる予定ではなかったんだ。
なのに、君は死んだ。
私だけを残して………
─── 独りにしないで。
パッと顔を上げると、教室全員の視線が私に集まっていることに気が付く。
目の前には担任がいて、私は何故か先生の腕を掴んでいた。
状況を理解するまでに何秒かかかったが、私は授業中に寝てしまったってことは何となく察した。
先生に言われて、自分の顔に触れると確かに目から涙が零れていた。
袖で拭って、笑顔を作ると先生も安心したような表情を浮かべる。
その瞬間、止まっていた時が動き出したように笑い声があちこちから聞こえてきた。
すると、隣に座るさなこと拔井桜苗が…
授業が再開され、少しした時にさなが私に手紙を回してきた。
「ねぇ、この前の集団自殺の話知ってる?」
それを見て、私の心臓はバクバクと大きな音で鼓動を刻み、握り潰されそうな感覚に陥った。
「あ〜、ニュースでやってたね。DEATH GAMEが始まったー…とかなんとか?」
心を冷静にして手紙をさなに戻すとスグに返事が私に送られてくる。
「そうそう!何か怖い話…」
「実際に起こったことだしね。」
実際に体験したらさらに怖いよ…
でも、心の中では起きないことを願っていた。
こんな楽しいクラスにあんなゲームが始まるなんて到底思えない。
嘘だといいけど…
そんな希望はスグに打ち砕かれることをこの時の私はまだ知る由もなかった…。
夜、部屋に遊びに来た妹の紅春と喋りながら、パソコンに入っている写真をぼっと眺めていた。
私の口癖は"当たり前"。
前までは"日本は平和ボケしている"とかも口癖になっていたが、DEATH GAMEに参加した後には一度も口にしたことはない。
「お菓子」という単語に目を輝かせた紅春が小走りで部屋から出て行く。
そのとき、ベッドに置いてあったスマホが着信音を鳴らした。
夜行性のさなが夜中に連絡や電話をしてくることは珍しいことではなかった。
パソコンから離れ、スマホのあるベッドへ。
メッセージじゃなくてメール…
11/01 00:00
To:GM
title:DEATH GAME
これからDEATH GAMEを始めます。
※これは桜華高校3年1組の生徒が対象です
※24時間以内に命令に従いなさい
※命令に背いた場合には罰を与えます
※途中棄権は認めません
命令1:出席番号26 明神柚輝は出席番号10 西園寺麗菜の手の甲にキスをしろ。
DEATH GAME…思った以上に早かったな…
3学期くらいって思ってたのに……。
でも、これが最後。絶対に終わらしてみせる。
最終幕だ。
背後から透き通った声が聞こえた。
振り返っても誰もいない、私一人だけの部屋。
何だか面白くて一人でクスリと笑う。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。