第17話

《外》の料理
「わあ…」

手を繋ぎ外に出る。高いビル、鳥の声、車の音、その全てが今の僕には不思議で別世界のようにも思えた。
リュウがいう《内の世界》で聞こえてくるのは馬車の駆ける音や人の声ばかりだった。小さな露店道は食べ物の匂いも確かにしたけど、外の世界とは比べ物にならない。
「リュウあれ食べたい!」

僕が指さした先にはらーめん、と書いてある。上にはたくさんの具が乗ってるらしくとても美味しそうだった。

「ラーメンか、内の世界にもそういや似たような食い物があったな。行くか」
「うん!」

僕はリュウと手を繋ぎ外の世界を歩いた。どれもこれも目に入る全てが僕を楽しませてくれる。

「ほら目移りしてると転けちまうぞ」
「うん。でも楽しくって」
「ったくしょうがねぇ奴だな」

そう言われてからすぐ僕の体はリュウに抱き上げられる。そのまま高い景色を楽しんだ。

「色んなものが高く見えるよ! すごい!」
「喜んでもらえて何よりだ。店に着くぞ」
「…わあ」

お店の前に来ると人が沢山並んでいた。最後尾はお店から遠いところにいる。

「………時間かかりそうだな」
「それだけ美味しいんだよね! 食べたい!」
「あー………並んで待つか」
「うん!」

そうして僕とリュウは最後尾に並ぶ。お店なんて見えないところだった。並んでる間に他のお店もあって途中でそこに入ろうかってリュウが誘ってくれたけど、僕は首を振った。
そしてようやくお店に入れたのは並んでから一時間後ぐらいだった。
「やっと飯にありつける…(ボソ」
「ねえリュウ、みんなが使ってる物って何?」
「ん? ……なんだ? 箸の事を言ってるのか?」
「はし?」
「その言い方だと橋になるな、ちょっと上げるんだ。箸、飯を食う道具だ。使ったことないのか?」
「うん…いつもフォークとナイフとスプーンばっかり使ってたから」

人が密集する中でテーブル席に行こうとリュウが手を引いてくれる。空いた席に座るとリュウが見せてくれたのは色んな種類のらーめんの写真が載った革表紙の薄い本だった。

「ここから食べたいもん選ぶんだ」
「わあ! 何にしよっかなぁ〜」
「何でもいいぞ」

僕はページをめくりながらそれを見つける。

「これにする! さっき外でパタパタしてる奴に載ってたのと同じもの!」
「ノボリの事か。ああいいぞ、多そうだな。食えなかったら俺が食ってやるから」
「うん! リュウは?」
「俺はそうだな…」

そうして暫く本を眺めた後リュウがお店の人を呼ぶ。

「オリジナルラーメンひとつと味噌ラーメンバター盛りの餃子定食ひとつ」
「かしこまりました!」

お店の人が元気よくそう言ってから料理が来るまでには時間があると教えてくれた。だから大人しく待つ事にした。

「ねえ、リュウはお嫁さんいないの?」
「何だよ急に。いるわけねえだろ」
「そうなんだ。だってリュウ格好良いから、1人や2人居るかなって思ったんだけど」
「お前馬鹿なのかよ。嫁が居たらお前何かと一緒に居るか、俺はお前で十分手一杯だよ」

そう言った後でリュウが膝を叩く。それは膝に乗れという合図だった。僕は椅子を降りてリュウの膝の上に乗る。

「いいかマシュー、お前の事は俺が守る。だから絶対に俺から離れるんじゃねえぞ、いいな」
「ん、分かってるよ。僕にはリュウしか頼れる人が居ないんだもん」
「よし、いい子だ。席戻れ」
「ここで食べたーい」
「いや食いづらいから勘弁してくれ、せめて隣に座れよ」

そう言われて大人しく降りるとリュウの真正面の席に戻った。

「お待たせしました! オリジナルラーメンと味噌ラーメンバター盛りの餃子定食です!」

僕の前に料理が置かれる。湯気が出て美味しそう!

「ご注文の品は以上でお揃いですか?」
「ああ」
「それではごゆっくり!」
「お兄さん! ありがとう!」
「あ……へへ、ありがとうございます! おなかいっぱい食べてくださいね!」

店員さんに頭を撫でられてから僕は手を合わせいただきます、を呟いて食べようとするも…。

「あれ……」
「そういや使った事ねえんだったな」
「うん…」

リュウは席を立つと僕の後ろに来て手を添えてくれる。そして持ち方を教えてくれた。
「んー、難しいね」
「慣れるまではな…仕方ない、こっち来い」

リュウは僕の料理と自分の料理を横に並べた。僕がリュウのそばに行くと膝に乗れと言われる。膝に乗ると、リュウは左手でお箸を持ち僕に食えと口まで運んでくれた。

「わあ、ありがとう!」

少しずつ噛み切りながら食べる。リュウはそのまま右手で自分のラーメンを食べていた。

「リュウ、すごい、両手使えるの?!」

さっきの料理を運んでくれたお兄さんもこっちを見て驚いていた。

「ああ、ほら食べろ。伸びるぞ」
「うん!」

僕は食べさせてもらいながら美味しいラーメンを堪能した。残ったラーメンはリュウが全部食べてくれて、完食した。