第3話

新しい家庭教師
「今日から新しい家庭教師が来る。みっちり勉強しろ。これで成績が上がらなかったら、一区中学校に行けなかったらお前はもうこの家の子供じゃない、分かったな真宙」

「…はい、分かりました」

「ふん。精々弟の聖に負けないようにするんだな。追い抜かれた時点でお前は真の出来損ないとなる事を覚えておけ」
部屋のドアが閉められると、僕は机に突っ伏す。親の期待に応えようと必死に努力した、褒められたくて頑張ってきた。それなのにいつも僕に浴びせられるのは『出来損ない』という言葉ばかり。出来損ないめ、出来損ないのくせに。それを聞くたび頭がおかしくなりそうだった。何をしても褒めてくれない、どうすれば褒めてくれるんだろう…そんな事を考えている時だった。
(コンコン)
「……部屋にいるか?」

それは聞き慣れない知らない声、僕はどうぞと小声で言いながら勉強の準備をする。今度はどんな先生なのか、また前みたいにすぐクビになるんだろうか?そう思いながら顔を上げる。

「……ッ」

「…なんだ、どうかしたのか?」

僕は " ガクッ " とバランスを崩す。

「危ないッ…」

その太くて大きな手が僕の小さな体を支えた。そのまま椅子に座らせ傍にあった黒い腰掛けに彼もまた座る。だけど僕は心臓の鼓動がやまなかった、どうして父さんはこの人を…選んだ?なんで?どうして……?

「…おい、大丈夫か。真宙」

「…ッ!」

独りでに肩が大きく揺れる。僕は押し潰されそうな恐怖で涙を堪えるので精一杯だった。
「…やっぱり恐い、よな」

小さく呟かれた声に僕は横目だけで彼を見る。テレビで見た事がある顔だと思った。彼はそう、" 外から来た特別な優待者 " と言うのか。僕がまだ小さい頃ある大きな事件が起きた。それは四区へと続く正門をこの男が通ったこと、この男は四区の住人ではない。何故AIが反応しなかったのか理由は不明、然しこの男に何か前科がある訳ではない…聞いた話だと、外から来た特別な優待者は……【記憶喪失】らしい。
だからこそ、【危険レベル5】の人物と断定されて一切の外出とかを制限されていたはず。それなのにどうして、僕の家に……?

まさか!みんなを殺してここにッ!
「真宙。思考がぐちゃぐちゃなのは分かる、だがな表向きだけの情報に惑わされちゃいけねぇ、真実を掴むにはいつだって己の目だけが頼りなんだ。だから…今日だけ俺を許してくれないか?折角貰った仕事なんだ…頼む」

全体的に黒っぽい服を着ているのも、左目に眼帯をしているのも、耳にピアスらしき穴が開いているのも…気になる事ではあるけど、確かに僕はこの人の事を【テレビ】という害悪にもなりうる物ででしか知らない。その本当の姿というか、中身は知らないんだ…。
「…えっとごめんなさい…」

「はは、いいさ。自己紹介がまだだったな、俺の名前は…龍也たつやだ。宜しく真宙」

「はい、宜しくお願いします。龍也先生」