第10話

元幹部②
「ぐうゥゥ……元幹部だっただけに、流石に下っ端共では相手にならんか」
「誰が来ようと相手になりません。団長、貴方が俺と戦っては? 今の攻撃で殺さなかった事の意味をお考えになってはどうでしょう?」
「生意気な口を利きおって! 貴様…ッ、その子供は必ず貰うぞ。それまで精々怯えて暮らすがいい!」

そんな捨て台詞を残すとデッドは床に何かを叩きつける。すると当たり一体を煙が覆った。

「ごほ、ごほっ! リュウ!」
「ここだ。すぐに出よう」

僕は鎖ごと抱き抱えられ走るリュウの服を握りしめた。リュウからは少し、砂の匂いがした。
「ねえ、リュウ……」
「しっ……」

廊下で突然立ち止まるリュウ。電気がついたり消えたりを繰り返している。

── その時だった!

── ガシャン!

「ッひ!!」
「そこか!!!」
「おっと…! バレてしまったか」

鉄の鎖が剣で切られている。落ちた鎖の破片がリュウに踏み潰され粉々になる。

「何故お前がここに? 団長の雑魚下ならばこの俺が先程片付けたばかりだが?」
「知っているさ。さっき見たからな、しかし団長は何故俺を呼ばなかったのか。貴様がこの組織を抜けてからこの俺、ユティ様が幹部となった。さあ戦え、この俺に負けて見せろ!」
その男は赤髪に金色の線が入った服を着ていた。リュウはその場に静かに僕を下ろす。

「ユティ、貴様は──」
「誰が呼び捨てにしていいと言った! 貴様は言うなれば四等区の雑魚に等しい! そんな奴が俺の名を呼び捨てにするなど死に値する」

彼は唇を舌で舐めるとニヤァと笑った。見開かれた目は今にも飛び出しそうなぐらいで気持ちが悪い。

「下がっていろ、怪我をする」

僕を少し後ろへ下がらせる。僕も一歩下がった時だった。

── バコンッ!

「へ、うわぁ!! リュウゥゥ!!」
「真宙!!!」
突然足元の床が開き僕は何とかぶら下がった。その手をリュウが掴んでくれる。

「大丈夫か真宙!」
「ッ、だ、大丈夫…僕は平……ッリュウ後ろ!」
「ッ…! ぐはっ!」
「リュウッ!!!」

僕を助けるために背中を向けてしまったから、その背を……ユティの剣が刺さる。貫通する。

「リュウゥゥ!!!!」
「あーっはっはっはっはっっあぁーっはっはっはっはっはっはっはー!!!!」

血を吐き苦しそうな顔をするリュウと高笑いをしては剣をグリグリと回すユティ。

「さあ! 苦しめ! 叫べ! この俺に許しを乞うのだリュウ!!!」

「ッぐは…! っく、そが…」

僕は血を吐き苦しむリュウを見ていられなかった。僕を掴む手は少しずつ弱まっている。このままじゃリュウが死んでしまう。僕は力を入れていた手を緩めた…。

「ッ! 馬鹿な事は、止めろ、まひ、ろ」
「僕なら大丈夫だから……リュウが死ぬのは嫌だよ僕…生きて。生きてまた、僕を助けに来てよ」
「だめだ、真宙! 行くなッ真宙!」

僕はリュウの手を、離した。
身体が落ちていく。叫ぶリュウの声が聞こえる。きっとまた助けに来てくれる、よね?

── 待ってるよ、リュウ…