第19話

遊園地②
「……ッあ!」
「気が付いたか?」
「あれ、僕……」
「気絶したんだよ、覚えてねえか?」

記憶が曖昧だった。額に手を添えて思い出そうとする、確かジェットコースターに乗ろうって言って乗った所までは覚えてるけどその後の記憶が無い気がする。気絶してたって…。

「お前1時間ぐらい気絶してたぞ?」
「そんなに!?」
「すっ飛ばすからだよ。遊園地は逃げねえんだからそんなに焦る事ねえっての」

僕は恥ずかしい気持ちにさえなる。まだ1回目なのに…。

「ほら気分も良くなったんなら何か乗るか? それとももう少し休むか?」
僕はもう少し休むと言ってリュウに凭れ掛かった。大きな腕が僕を包み込んでしまう。それがすごく落ち着くんだ…。

「ねえ、リュウ…、ごめんね。迷惑かけちゃって」
「何を謝ってる。俺は迷惑かけられたなんて思っちゃいねえぞ。だから謝る必要なんかない」

僕達は顔を見合わせて笑い合う。優しいリュウと出会えて僕は幸せだよ。家族に疎まれて、弟に立場を奪われてしまって、そんな僕をあの牢獄から出してくれたリュウは、正に僕のヒーローとしか言えない。感謝しても仕切れないよ。

「リュウ、あの車に乗りたい!一緒に乗ろうよ!」
「ゴーカートか、あれならお前が運転しても大丈夫だぞ?免許が必要ないからな」
「めんきょ?って何?」
「免許は車の運転に必要な証明書みたいなもんだ。それがない奴が車を運転すると逮捕される」
「ひぇ……」
「だがあれなら大丈夫だ、遊びだからな。免許も必要ない、運転してみるか?」

僕は首を振り、リュウと一緒にゴーカートに乗る事にした。運転席と助手席だけの簡易な作りでエンジン音がかっこいい乗り物だと思った。

「よっしゃ、行くぞ真宙!」
「レッツゴー!」
その掛け声でリュウの車が動き出す。サイドには道みたいなものが作ってあって、リュウはそれにぶつからないように巧みに速く運転する。

「ひゃっほー♪ 速い速い!」
「おらおら、飛ばすぞ!」
「わぁい♪」

僕は両手を上げてゴーカートの速さとリュウの運転を堪能した。楽しかったゴーカートはすぐに終わりを告げてしまう。

「楽しかったのになー、もう一回!」
「気に入ったのか。それなら降りてもう一回乗るか」
「うん! 乗りたい!」

僕達は再びゴーカートに乗った。2回目は僕が運転席に座った。リュウに教えて貰いながらそろりそろり運転する。
途中で僕達は場所を交代してまたあの速さを楽しんだ。
「はぁ、楽しかったぁ」
「俺も久々に乗ったぜ、あんな乗り物」
「ねえリュウ、あそこは何?」
「あそこはゲームセンターだ、行ってみるか」

僕はリュウと手を繋ぎゲームセンターへ向かった。

「クレーンゲームで何か取ってやろう」
「くれーん??」
「見て見りゃ分かるよ」
「ふーん。あ、ぬいぐるみ!」
「欲しいのがあるなら取ってやるよ」

僕はリュウの手を離しゲーム機に近付いた。



── その時だった。



バンッバンッバンッ!
「全員ここを動くんじゃねえ! ッ来い!」

「へ……ッひ…」
「……っち」

それはほんの数秒、僕がリュウから離れた瞬間に起こった出来事だった。