第38話

潜入②
《それについての情報ならまだあるよ!》

「何本当か」

 前に出てきたのは黒い体に足元だけが白い毛に覆われた猫だった。

「本当さ。バラベルトは全征服を企んでいるのは勿論、そのやり方はこの全等区からそれぞれ腕っ節の軍隊を作って…外の世界に戦争を仕掛けるつもりでいる。そして自分で仕掛けた戦争を自分の手で止める気だ、戦争と言っても外の世界じゃほぼ奇襲になるだろうね」
「……何だよそれ、やり方が汚ねェぞ…」
「それがバラベルトのやり方だよ。無差別に人間を殺す、それも自分の手を汚すこと無く、更には救世主に成り上がる。今までもそうだった、一等区の人間は彼に逆らえない。だからこの場所で人に物を聞いても情報は得られなかったと思うよ、彼らは君達の敵だもの」
「あぁ違ェねぇ、誰もてめぇらの話なんざ聞きゃしねぇよ。このチビがガキに話を聞いてるのを親共に見られてからは敵の目よ」
「真宙、と…さっきの……」

 やって来たのは灰色の小さな猫の真宙と片目に傷を負った黒猫だった。真宙はしゅんとして俺の膝の上に飛び乗ってくる。

「ごめん、リュウ。聞こうと思ったけど子供達の母親が目の色変えて…追い払われた」
「そうか。よく頑張ったな、何か得られたか?」

《それについては俺が話そう》

 そう言って目を怪我した黒猫が凛々しく座り俺を見すえた。

「あんた達はどうやらバラベルトについて調べているみたいだな。こいつらから情報はいくつか得ているだろう、全等区統一、全等軍隊を作る事、外の世界への奇襲、そして内と外を統一し統率者となる事…」

「あぁ、聞いている」

「簡単にまとめればバラベルトは全世界の統一を目指している。そしてそれが目前という訳だ。だがその目前で障害物なのがお前だチビ」

「ぼ、僕……?」

「そうだ。バラベルトは家から追放したお前が何か秘密を知ってるとも限らない。知ってるにせよ知らないにせよ、邪魔な駒は潰す。全征服の企みは真宙を殺すための軍隊でもある、外へ逃げたならば即刻罪人として殺す手筈になっているだろう」
「何故そこまでして真宙を消したがるんだ」

「バラベルトは慎重な男だ、何事も完璧でなくてはならない。それにお前たちは総指揮官がバラベルトだと誰に聞いた? そいつが口を割っていればお前らを標的にするのはわかりきっている事だ。そんな事も分からないのか」

 とにかくバラベルトのしようとする企みが分かった。
① 全等軍隊を作る事
② 外の世界への奇襲
③ 内と外を統一し統率者となる事
④ 障害物となりうる真宙を潰す事
「だが分かったところでどうする」

 俺が頭を抱えていると黒猫のリーダーが俺の足を前足でチョイチョイと叩いてきた。

「なんだ」
「やだなぁおじさんは、僕らはキャットナイトだよ。この一等区の治安を守るために夜な夜な動き回ってるんだ。おいでよ、今日の夜に。秘密の夜会をするから…そこで本当の姿を見せてあげるよ」

 そう言われ手渡された一枚の紙には地図が書かれていた。白い猫はうん、と頷く。

「僕らのことは秘密だよ、今日の夜にまた会おうね」

 そう言って彼らは散り散りに走り去っていった。

「リュウ、キャットナイトって?」
「俺にもよく分からんが…今日の夜この場所に行ってみよう、二等区にあるらしい」
「うん…でもいい猫達で良かったよね」
「全くだ。まさか猫から情報が得られるとは思わなかったぜ」

 俺たちは二等区へ引き下がり、小さな宿を借りると夜までそこで過ごすことにした。