第37話

潜入
「……ん?」

 お腹に重みを感じて目を覚ます、真宙の姿が元に戻っていた。どうやら数時間の効果らしい。まだ猫のつもりか丸くなって寝ていたもののバランスを崩し俺の腹の上から落ちた。

「いったぁ……あ、元に戻ってる」
「よぉ真宙? お前って奴は勝手なことをするんじゃない。だがお陰で突破口が見えた」
「ごめんなさいリュウ、でもよかった!」

 俺の考える作戦はこうだ。
 猫になった真宙と共に一等区へ入る。話せる猫は希少価値があると聞いたことがある。猫の真宙を連れて一等区へ潜り込み、聞き込みをする。ターゲットは…子供だ。大人では警戒心が強すぎる、子供ならば…集められる情報に限りはあるものの何も無いという訳ではないはず。

「行くか、準備は出来たか」
「出来たよ!」

 再び真宙には変身の術を使い猫の姿になってもらった。どうやら真宙の術熟練度では小さな猫の姿に数時間、が限界らしい。
 真宙を懐に隠し二等区、三等区を通り抜けていく。ここまでは大丈夫だ。
 一等区に足を踏み入れる。流石に少し緊張してしまう。胸元をかりかりとされ俺がその方を見ると懐から飛び出し肩に乗ると俺の頬をザラザラの舌で舐められた。

「きっと大丈夫だよ、上手くいく」
「……はっ、こりゃ元気づけられたのか…そうだな」

 真宙は肩から飛び降り休日の昼間に遊び回る子供達へ近寄りあっという間に人気者になっていた。

「この辺りじゃ見かけないね」
「すっげーデカイな」

 誰だと声の方を見ると二匹の猫が俺を見ていた。これは、と…俺はしゃがみ話しかける。

「デカくて悪かったな猫共」
「……僕らに話しかけてる?」
「これはすごいね、術を使える人が一等区に居たなんて」

 間違いない、俺はただの猫とも話せるらしい。

「猫共、聞きたいことがある。バラベルトって知ってるか?」
「知ってるよ、この辺りを取り締まるドラゴンサバイバーの管理者だろう?」
「そのバラベルトについて何か知ってることはないか?」

 黒い猫と白い猫、どちらもオスのようだ。二匹は顔を見合せ頷いた。

「知ってるよ。他にも仲間が居るんだ、あの子は君の猫かい?」

 灰色の小さな猫、真宙を見てはそう聞かれ俺はそうだ、と頷く。

「分かった。僕らのキャットナイトの一人にあの子を守らせる。ついてきて」

 キャットナイトとは? そう思いながらも俺はこの二匹の猫についていく。後ろを見るとこっちを見て頷く真宙と傍らに片目を怪我した黒い猫がついていた。
 猫の集会とでも言うのか、沢山いる猫の中に俺は傍の石に腰掛け眺めた。

「みんな、この人は敵じゃない。僕らキャットナイトに情報を求めに来た術者だ」
「バラベルトについて調べているみたいだ。僕らの知ってる情報を渡そう」

 二匹の猫がそう言うと猫たちは急にキリッとした顔つきになる。このコンビはどうやらリーダー的存在らしかった。

《バラベルトはこの街を征服しようとしている! 全等区をね!》
《真宙という子供を殺そうとしているよ!》
《最近聖という子供が死んで機嫌が悪そうだった。役立たずと怒鳴ってるのを聞いたよ!》
《バラベルトは外の世界も征服しようとしている、内の世界と外の世界を合体させてその頂点に立とうとしているよ》

「何! 最後情報を言ったのは誰だ」

 黒の猫が前に出てと言うと、出てきたのはキジトラの猫だった。

「さっきのを、もう一度…」
「いいよ。バラベルトは外の世界も征服しようとしているんだ。内の世界をほぼ征服し終わっているらしい、次は外の世界を征服して、内と外で全征服を企んでいるんだ」
「全征服…だと…」
「そう。そしてその頂点に立とうとしている。全世界の統率者になろうとしているみたいだよ、それも恐怖で…従わせるつもりみたいだ」