第13話

戻り
「……ッあ」
「真宙! 真宙大丈夫か!」

僕を抱き締めてくれるリュウ、僕は手を伸ばし彼の頬を撫でた。

「これを飲め、傷が治る」
「…んっ、んっ…(ゴクリ」

リュウがくれたポーションを飲み干してからすぐ僕の傷が塞がり痛みが消えた。服は破れたままだけど元に戻っている。

「リュウ! そうだ、怪我…」
「俺はもう大丈夫だ…」
「そっか、良かった。リュウもこのポーションで治したの?」
「あぁ…」

リュウの服も破れているけど傷はない。それを見てほっとする。僕はリュウに手を伸ばしてそのまま抱き着いた。

「心配かけてごめんね、リュウ」
「全くだ…もう、闇の中に消えてくれるなよ真宙」
「大丈夫。もうそんな事しないよ」

僕は彼に笑いかけてからそこに居る大切な人の温もりをしっかりと体に刻み付けた。

「さあ、帰ろう真宙。家に」
「うん。帰ろ、リュウ」
僕達はアジトのような家から外へ出る。
既に日が昇りかけていた。

「もう朝になるね」
「ああ。真宙、お前に話しておくことがある」
「うん、何リュウ」
「あの家にお前がいる事も一等地区の人間だと言う事もバレてしまった。それを隠している俺も只では済まされんだろう」

それは僕が誘拐されたからだ、ただの四等区の人間をさらう必要は無い。売り飛ばすなら高い地区の人間だと決まっているから。

「四等区を出るぞ。つまり、塀の外へ行く」
「えっ…。塀の外に出られるの!?」
「ああ。俺は塀の外から来た人間だからな」

僕は夢のようでもあり少し怖くもあった。外の世界は内の世界と何がどう違うんだろうか。それをこの目で見てみたい。

「それともう1つ、お前に新しい名前を授けてやろうと思う」
「新しい、名前?」
「そうだ。俺と一緒に外の世界で暮らすならこの世界で使っていた名前は必要ないはずだ」

僕はしっかりと頷いて彼の目を見た。僕にどんな新しい名前をくれるんだろう。

「お前には元々名前を与えてやるつもりだった、それが思わぬハプニングで延期になってしまったが……お前の新しい名は、マシューだ」
「……マシュー…」
「ああそうだ、マシュー、神の贈り物という意味だ。俺にとってお前との出会いは神が与えてくれた運命だと思っているんだ」
「リュウ……」

僕は嬉しくて何度もその名前を口にした。新鮮だった、実感がなかった。でもマシューという名前は僕に合ってる気がしたんだ。真宙よりずっといい名前のような気がする。

「気に入ってくれたか?」
「うん! ありがとうリュウ! この名前とっても好きだよ。大切にするからね」
僕達はそんな話を終える。

「ん、あぁ見てみろマシュー、朝焼けだ」
「わあ……とっても綺麗だねリュウ」

お互い顔を見合わせてからどちらともなく手を繋ぎ、僕らはあの家へと向かった。