第32話

絶命
僕にはとても真似出来ない事だと思った。初めて見る人が解体されていく姿に、吐き気と目眩と悪寒を覚える。
どうしてお父様はこんな事が平気で出来てしまうの? おかしいよ。おかしいよ。おかしいよ。お母様も何も言わない、お父様が正しいんだとそう言っている。

兄のマヒロが出て行ってから僕は兄を追い出した優越感に浸っていた。この家を継ぐのは僕だと言われた時本当に嬉しかった。継ぐ者として秘密を教えると言われてついて行った先にあったのは、首を落とされて人の姿をしていた何か、僕は直ぐにその場で食べた物を吐き出した。

ドロリとした何かが頭部から零れているし、目も取れて……それ以上見ることが出来なかった。お父様は慣れろと言うけど僕には到底無理な事だった。
「お、父様……この部屋は…」
「拷問部屋だ。使えない人間を解体しながら苦痛を存分に味合わせる部屋だ、どうだ素晴らしいだろう?」

そんなの狂っている。僕の目の前で実践すると言われた時、気がおかしくなりそうだった。椅子に座った男の人が人の形じゃ無くなる頃には僕は何度気絶したか分からない。
ふらふらで吐き気がして夢に現れそうで恐ろしかった。そんな地獄の時間が過ぎてから勉強なんて身に入らなくなった。

この時初めて兄を呼んだ。兄の名を……。マヒロ助けてって、でもこの家から追い出された兄はもう戻ってこない。僕はとんでもない家に生まれたんだと気付かされる。僕が貰った頭脳の良さは天性のもの、だけどそれがいい事に使われる事は決してない。僕は殺人者の子供で、それを悪びれない最悪の父親の息子、マヒロは逃がされたと言ってもいい。いや、もしかしたらこうなる事を分かってて偽ってたのかもしれない。マヒロは僕を犠牲にしたんだ!
「あはは……ははっ、僕はこの家に…縛られ続けるんだ」

そう思うと苦痛でしか無かった。部屋にあるネクタイ、僕はそれをカーテンレールに引っ掛ける。椅子に登り首を入れて……。

「こんな家に居るぐらいなら死んだ方がマシだよ、さよならお父様。さよならお母様」

僕は椅子を蹴飛ばす、苦しい、苦しい、苦しい。この苦しみも直ぐにほら……