第35話

突破口②
「何が書いてあるんだ」
「変身の術式だって。これを使うと一時的に他の生き物又は他人へと姿を変える事が出来る。但し効果は使う者の術熟練度により変化する、って書いてあるよ」
「術熟練度……」

 リュウは貸せと手を伸ばす。僕は本を渡すと彼の傍らに寄り添い本を覗き込んだ。それ以外のページにも術式と呼ばれる物が書かれてある。星マークで表されそれは難易度らしく、難しいものは星が10個で書かれてある。

「一体誰がこんな本を……」
「でもこれがあれば一等区に入れ──」
「バカを言うな。どうやって変身するんだ。確かに術式は知っている、だが俺が使えるのは戦いでのみ、後はこの目だ。それ以外の術式なんて、やった事もないぞ」

 リュウは本を見ながらため息をこぼした。僕も少し肩を落とす。術式にはその手の呪文が必要だった。正しく発音すること、間違えずに、とある。リュウは立ち上がり本を戻す。

「使わないの?」
「有難いがリスクが高い。術式はずっと使えるわけじゃない、効果が何時どこで切れるかも分からないんだ。それを使うのはフェアじゃない」
 僕は大人しくその意見に従う事にした。日も沈みかけリュウと小屋で一晩過ごす。

 寝息を立てる頃、僕は本を持ち出した。外に出て書いてある術を何度も読む。難易度が少し高めで7個の呪文が必要だった。
 月明かりの下、本を片手で持ちもう片手を本にかざし術式を口にした。

【草よ、水よ、大地よ、空よ、風よ、我に己以外の姿を授けたまえ、transfiguration!】
 僕は光の輪に包まれ下から巻き起こる風に服がはためく、光が止む頃…僕はドサッとしりもちを着いた。視界が……酷く低い気がする。

「(何が起こったんだろう…)……っ!?」

 言葉が話せない事に気付く、変な声しか出ない。僕は助けを求めに行こうとしたけどすぐに倒れてしまう。足に力が入らない。

「(どうしよう、どうしよう…リュウの言う通りにしておけば…)」
「さっきの光はなんだ真宙……、真宙?」

 眩しい光で起きてきたリュウ、こんなに大きかったっけ? 足元から見上げながらそれでも必死に助けを求める。

「真宙………っ…なのか、お前…」
「にゃー! にゃー!」

 抱き上げられると呆れた顔のリュウが居た。足元に落ちていた本を拾いあげる。開いたままのページを見ながら僕を肩に乗せる。

「勝手に術式を使うんじゃない。人ですら無いじゃないか…」

 僕はしゅん、となる。だけど撫でてくれる手が気持ちよくて自然に喉がゴロゴロとなる。

「いい気なもんだな、猫になって俺に甘えてくるとは。今の状況分かってるのかお前は。全く! とりあえず中に入るぞ」

 そう言われ僕は肩に乗せられたまま小屋の中へと戻るのだった。