ー無一郎sideー
僕は焦っていた。
あなたが居ない事で焦っていたんじゃない。
彼女が『炭治郎の家』へと向かっていたからだ。
一応、彼女は知らないだろうけど連れ去った時にGPS、小型ボイスレコーダーをあなたの体内に仕込ませている。
だから、逃げられた時は追える、そう思っていたが──。
恋敵、という訳だ。
勿論、炭治郎は僕も助けられた経験があるから、排除するのは考えものだけど。
彼に嫉妬したのは何回だっただろうか。
そう考えると、どうしようもない嫌悪感が自分から湧き出てくる気がした。
疑心暗鬼な僕は、もうあなたに嫌われたと錯覚してしまった……けど、ボイスレコーダーにはこんな事を録音していた。
と、思ったはいいが、よく考えれば……。
そう思うと、合点がいった。
彼女は、僕に頭を冷やして欲しかったんだろう。
だけど──あなたがワルイんだよ?
もう、遅いんだよ、何もかもが。
僕は、悪くない。
愛に飢えた君を、満たしてあげたかったが故の──。
僕の、行動なんだから。
ーNEXTー
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。