薄暗い夜の闇の中、ピンポーン♪という軽やかなインターホン音が響く。
インターホンに向けてそう話すと、彼は急ぐようにして玄関へ出てきてくれた。
まぁ……言う機会はいくらでもあった。
携帯機器は取られてないもの。
そう、思ってたら。
ブーッ、と通知音が鳴った。
それでやっと、携帯を持たされていた意味を知る事になる。
私の携帯に、通知を知らせるバナーが沢山表示される。
『ねぇ』
『なんで』
『炭治郎の所に』
『行ったの?』
『Muitiroがスタンプを送信しました』
それを読んで、私は真っ青になった。
なんで、私が炭治郎くんの所にいるって知ってるの?
炭治郎くんがそう言っている間にも、
『あのさ』
『文句あるなら』
『面と向かって言ってよ』
『生活には何不自由なく』
『させてるよね?』
……と、無一郎くんの暴走は止まらない。
察しのいい彼なら、本当は分かっているはずだ。
『私がわざと逃げた』と。
無一郎くんの愛は偏愛、なのかもしれない。
分かっては、いたけど──。
『どうしたらあなたは戻ってくるの?』
『愛を囁いてあげるからさ……』
『前みたいに』
『好きだよ』
『愛してる』
『だから、行かないで』
『って』
『お願い(´•̥ •̥`)』
『既読スルーはやめて……』
無一郎くんは、顔文字まで使ってあざとさを表現している……。
どうしよう──無一郎くんは、もう元に戻らないの?
どうしようどうしようどうしよう……!!
ーNEXTー
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!