LINEの返信が途絶えた。
このままじゃ、ダメだよ、そう送ったけど、彼には響いたのか、響かなかったのか。
いつの間にか無一郎くんはここまで来ていた。
ただただ、静かにそこに佇んでいる。
そう言った無一郎くんは私の方へ近付いてきて、深い口付けを落とす。
そして私をお姫様のような大事な存在を持つように優しく抱える。
ごめん、と無一郎くんは目を伏せて囁き、私を逃げないように固定してから、歩き出す。
震える声で、彼は呟いた。
辛そうに、そして思い詰めるように。
率直な感想だ。
誰がなんと言おうと、これは変わらない。
無一郎くんは今日何度目かのごめんねを言って、私の首筋を『何かで』刺した……。
どくどくと流れる血。
無一郎くんの服が赤黒く染まっていくけど、無一郎くんは気にしない。
……無一郎くんは、確かに言った。
逃げたら剥製だ、と。
そこで、私の意識は無くなった──。
ーENDー
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。