第140話

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2022/07/31 23:26



《まい》



3時間、食べて飲んで話しまくった私たちは、居酒屋を出た。
サナ
はぁ〜!満腹〜
まい
私も〜
楽しかったぁー!
サナ
私は、ホテルすぐそこなんだけど、廉は?
俺は電車に乗って行く
サナ
そっか、じゃあここでお別れだねー
まい
また明日会えるよ
サナ
そうだよね〜
じゃあまた明日ねー!
こけるんじゃないぞー!
まい
気をつけてねー!


サナと別れた私と廉は一旦お互いの顔を見る。

と、とりあえず駅まで行くか
まい
そ…そうだね!

私と廉は駅までの夜道を2人で並んで歩く。

こうやって2人っきりになるのは久しぶりすぎて、なぜだか変に緊張してしまう。

私……いつもどうしてたっけ!?
なぁ……まい
まい
えっ!あっ!!


急に廉に話しかけられて思わず肩が上がる。 

そのせいで、私はヒールがガクッとなり、バランスを崩す。

倒れそうになる私は、廉の強い力によって引っ張られた。
気をつけろよ……
まい
あ、ありがと……


思ったより廉の顔が近くにあって私は顔に熱が昇るのを感じる。

外が真っ暗でよかった……

これならきっと、顔の赤さなんてバレないよね。

卒業した頃よりも少しだけ伸びた身長は私よりも遥かに高い。

セットされた髪の毛に、筋肉のついた腕。

……昔はあんなに小さくて細くてかわいかったのに!
まい
そ、それで……どうしたの?
あーいやー……別に大したことじゃないんだけど
まいって彼氏いるのかなー……って


廉は自分の首に手を持っていきながら低い声で言う。

……な、何その質問!?

この状況でそんなこと聞かないでよ……
まい
いないよ……ずっと……
まい
べ、別にいいでしょ!
え!ずっといない!?1度も?
まい
告白は何度かされたんだけど……なんか怖くて……
マジか……
まい
れ、廉は!?
いない……っていったらどうする?

廉は急に歩きを止める。

私も廉に合わせて立ち止まる。

廉に彼女がいないなら……

私は……どうしたいの……?

まい
な……なんでそんなこと……
まだお兄さんのことが好き?
まい
……っ


久しぶりに他人の口からお兄ちゃんの話が出てきて、私は少し動揺する。

この5年間、私は1度もお兄ちゃんと会っていない。

お兄ちゃんはお正月も夏休みも帰ってくることはなかった。

お母さんとは時々連絡を取っているみたいだけど、私とは1度も連絡を取ってもいない。

……それでも

お兄ちゃんがいなくても、私は5年間必死に頑張ってきた。

どうしようもなく孤独に押し潰されそうになって、全てを投げ出したくなるときもあった。

だけど……泣きながらでもいいから必死に喰らいついてきた。

自分の力で歩いていける……強い大人になるために。



まい
ねぇ……廉……
まい
わたしはずるいんだよ


困ったことがあったら、自分で乗り越えるようになった。

人に助けてもらうんじゃなくて、助ける側になった。

自分一人で生活できるようになった。

私は……きっと一人でも大丈夫。

だけど………









まい
私はやっぱり弱いみたい
1人は寂しい……
まい
だから廉に…そばにいてほしい……
まい
……っえ!!?


一瞬何が起こったのかわからなかった。

急に私の身体が宙を舞ったように動いて、気づいたら廉の腕の中に……

ってえええ!!?

な、なんで抱きしめられてるの!?
まい
れ、廉!?
俺だって、ずっと彼女いねーよ
お前だけだよ、まい
ずっと……そう言われるのを待ってた






魔法がかかったかのように瞳の中が煌めく。



もういいよね……

この5年間、1人でずっと頑張ってきた。

1人で頑張ることは素敵なことなんだろうけど、ずっとずっと孤独で本当は寂しかった。

辛いときは誰かにそばにいて欲しかったのに、ずっと強がってた。

だから……もうずっと好きって言いたかった人に甘えてもいいよね……

5年間……ずっと1人で頑張り続けたことが報われた気がした。



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