《まい》
お兄ちゃんといろいろあった冬もあっという間に過ぎていき。
1月、2月私は必死に受験勉強をし。
3月。
今日はとうとう、入試の日。
私は朝からバタバタしてた。
昨日の夜も緊張でちょっとしか寝れなかったし。
どうしよう……また緊張してきた。
とりあえずちゃんと筆箱と受験票を入れて……。
も、もう一回だけ忘れ物ないか確認!
もう20回ぐらいしてる気がするけど。
上靴、受験票、筆記用具、参考書、お弁当、お守り……
多分、大丈夫!
お母さんはそう言って家を出ていく。
もう、緊張しすぎて吐いちゃいそう……
わからない問題がたくさん出たらどうしよう……。
全然解けなかったら……
いっぱいミスしたら……
お兄ちゃんは私をギュッと抱きしめる。
な、なに!?
っていうかハグ!
お兄ちゃんは耳元でそっと囁くと私を開放する。
それと、同時にドアが開く。
私は最後にお兄ちゃんを振り返る。
お兄ちゃんは優しく微笑んでいた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!