第55話

55
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2022/02/10 01:22
ピンポーン
...ピンポーン
た つ や 。
出ないか...
立ち去ろうとした、その時後ろでガチャ、と音がした。
太 我 。
たつやくん...!?
その声に俺は振り向くことが出来なかった。
引っ越しの現実味が湧いてきたから。
もう会えないという実感が湧いてきたから。
すごく好きで、大好きで、忘れられないこの人を直視出来ない。もう会えないのに。
た つ や 。
たいが、ごめんねこの前のこと
俺は振り向かずに話した。
太 我 。
え....
た つ や 。
俺もう今日引っ越すの
た つ や 。
ほんとに、ありがとう
た つ や 。
お隣さんがハルと太我で良かった
た つ や 。
毎日楽しかったよ
太 我 。
...なんで?
太 我 。
なんで一生会えないみたいな感じ出してんの...
太 我 。
ふざけないでよツ...
太 我 。
俺たちは...達也くんと過ごした時間...他の誰よりも負けないくらいに多いんだよ
太 我 。
前世も、今世も一緒にいる人でしょ
太 我 。
こんなの滅多にないよ...
た つ や 。
そうだよ
太 我 。
やめて!引っ越しなんてやめて
た つ や 。
太我
太 我 。
やだ、行かないで、、
た つ や 。
太我!!
太 我 。
ビクツ
振り向くと今にも泣きそうな太我がいた。
た つ や 。
俺...太我のことが好きになっちゃった
た つ や 。
ダメってわかってるんだよ
た つ や 。
太我にはハルが居るし
た つ や 。
"忘れたい"の...この恋心をさ
太 我 。
そんなこと言ってたね、前世も
太 我 。
達也くんの"忘れられたい"ってさ、幸せになれるの?
た つ や 。
えっ
太 我 。
いつも言ってた。それでハルと喧嘩してさ
太 我 。
忘れたいってなんなの?
太 我 。
両方望んでることなの?
太 我 。
俺は少なくとも望んでない
太 我 。
そりゃあ達也くんが俺の事好きだったなんて知らなかったし
太 我 。
俺だって聞いてびっくりした
太 我 。
でも、嬉しかったよ
太 我 。
でも俺はハルがいるから
た つ や 。
うん...ごめん
太 我 。
引っ越すなら条件がある
引っ越す、引っ越さないはこっちの問題なのに、太我は条件を出すと言い始めた。
そして白い紙を持ってきた。
太 我 。
引越し先の住所と電話番号。書いて
た つ や 。
...うんツ!
紙に住所と電話番号を書き、笑顔を作った。
奥からはハルが出てきて抱きついてきた。泣きそうな声でずっと話してた。
晴 人 。
毎日LINEするし毎日返事するから!
た つ や 。
あははwありがとう
2人に手を振りその場を後にした。

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