中庭にあるベンチに座る
秋の風が心地いい
なんていい子なんだ…涙
礼儀正しすぎんだろとうきょーではこれが普通なのか⁉︎
いや,でも不良が多いって聞いたことあるぞ…
すると赤葦君は空の方を見上げながら
なんか,可愛いな
男の子に思うのは変かな
…
…
…
体を反り返しながら言った
怖くて体育館には近づいてないけど
下校中に聞こえるボールの独特の音,
聞くだけで
泣きそうになる,なんでかな
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赤葦𝑠𝑖𝑑𝑒
嗚呼,
この人は本当に
バレーを愛していたんだな
きっと,俺よりも。
少し切なく空を見上げるその横顔が,
とても綺麗だと思った
話しかけようとしたら,
ブーッブーッ
突然,俺のスマホが鳴った
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ブーッブーッ
急に赤葦君のスマホが鳴った
電話かな,
一言二言話した後,彼は私に笑顔を見せながら
若菜先輩…
あーだめだ,
泣きそう
ポタッポタッ
目から溢れたもののせいで
スカートの色が濃くなる
なんか,意外
若菜先輩のことだから
なんか,もっと,背中を押すような言葉を言ってくれると思ってた
あ,そうか
私が知ってる若菜先輩は
今の赤葦若菜とは別人なのか
電話を切ってから考える,
なんか,やるせないや
戻るつもりなんて,ないけど
…
…
核心をつかれた気がした
赤葦君は微笑んだ
嗚呼,なんか,似てるな,あいつに。
__徹に。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!