第52話

49話.核心
32,155
2021/01/22 12:31
あなた
さて…と,
あなた
この辺でいいかな





中庭にあるベンチに座る
秋の風が心地いい









あなた
ありがとね,今日来てくれて
赤葦京治
いえ,俺が勝手に来ただけなので,むしろ会ってくれてありがとうございます








なんていい子なんだ…涙
礼儀正しすぎんだろとうきょーではこれが普通なのか⁉︎
いや,でも不良が多いって聞いたことあるぞ…










赤葦京治
あなたさん?
あなた
あ,ごめんごめん,なんだっけ?
あなた
話,あるんだよね?





すると赤葦君は空の方を見上げながら







赤葦京治
はい,ほんとは若菜がくるはずだったんですけど,仕事で来れなくなったので,急遽俺が来ました
あなた
若菜って呼んでるんだ?w
赤葦京治
あ,はい,従姉妹なので笑
あなた
あ,そうなんだ,でもちょっと似てるね
赤葦京治
え,そうですか
あなた
うん,くしゃっと笑った顔とか特に
赤葦京治
そうかなぁ笑



なんか,可愛いな
男の子に思うのは変かな










あなた
赤葦君は,優しい人だね
赤葦京治
……そんなことないですよ,普通です
あなた
ううん,私にはすごく優しい人に見える









赤葦京治
あなたさん,部活辞めたんですね
あなた
…分かっちゃった?
赤葦京治
はい,来るまでは全然でしたけど,教室に入ってなんとなく,空気が…
あなた
そっかそっか笑



あなた
若菜先輩と同じことになっちゃってさ,
あなた
なんか情けないよね
赤葦京治
…戻りたいって思いますか?
あなた
思わない,今は
あなた
少し前までは後悔してたけど,なんかもういいかなって思ってる
赤葦京治
そんなんですか





あなた
でも,
あなた
やっぱり,好きだなって思う
あなた
バレーボール




体を反り返しながら言った
怖くて体育館には近づいてないけど
下校中に聞こえるボールの独特の音,
聞くだけで
















泣きそうになる,なんでかな
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
赤葦𝑠𝑖𝑑𝑒
あなた
やっぱり,好きだなって思う
あなた
バレーボール





嗚呼,
この人は本当に
バレーを愛していたんだな
きっと,俺よりも。













少し切なく空を見上げるその横顔が,
とても綺麗だと思った











話しかけようとしたら,




ブーッブーッ



突然,俺のスマホが鳴った





赤葦若菜
京治‼︎あなたちゃんに会えた?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ブーッブーッ



急に赤葦君のスマホが鳴った
電話かな,




一言二言話した後,彼は私に笑顔を見せながら
赤葦京治
若菜から電話です,あなたさんが良ければ話してやってください


若菜先輩…



あなた
…もしもし
赤葦若菜
‼︎もしもし‼︎あなたちゃん?
あなた
はい,お久しぶりです
赤葦若菜
久しぶり‼︎元気してた?






あーだめだ,
泣きそう








赤葦若菜
部活,あれからどう?
あなた
……すいません,
赤葦若菜
謝らなくていいよ,聞いてごめんね
あなた
…私,逃げちゃいました
あなた
負けちゃいました,


ポタッポタッ



目から溢れたもののせいで



スカートの色が濃くなる




赤葦若菜
…逃げていいよ
あなた
…ぇ
赤葦若菜
逃げても,今が楽しいなら私はいいと思う
赤葦若菜
現に私は,辞めさせられてから,幸せだったから
赤葦若菜
…夢壊しちゃうけど




なんか,意外
若菜先輩のことだから
なんか,もっと,背中を押すような言葉を言ってくれると思ってた






















あ,そうか
私が知ってる若菜先輩は
今の赤葦若菜とは別人なのか





あなた
…ありがとうございました





電話を切ってから考える,
なんか,やるせないや
戻るつもりなんて,ないけど















赤葦京治
心優しいのは,あなたさんの方じゃないですか
あなた
…そんなことない
赤葦京治
今,若菜は大学生活を楽しんでるようですよ,色んなことも経験できていて
赤葦京治
でも,バレーの話は一切しないですね
赤葦京治
トラウマになったんでしょうね
赤葦京治
けど,理由は簡単で,若菜は元々バレーが大好きってわけじゃないんですよ
赤葦京治
なんとなく入って
赤葦京治
なんとなくマネージャーして
赤葦京治
なんとなく恋して
赤葦京治
…そしたら,夢中になってて
赤葦京治
でもそれを妬む人が出てきて
赤葦京治
そのせいで奪われて
赤葦京治
裏切られて
赤葦京治
…バレーボールが好きだからという理由で入ったわけではないなら,辞めても後ろめたくないんです,あんまり




















赤葦京治
でも,貴方は違う
赤葦京治
好きだから
赤葦京治
バレーが好きだから
赤葦京治
これからもTVだったり色んなとこでバレーは見ることはできる
赤葦京治
けど,貴方は










赤葦京治
彼等がするバレーが好きなんですよね








核心をつかれた気がした
赤葦君は微笑んだ









嗚呼,なんか,似てるな,あいつに。







__徹に。

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