瑠奈𝑠𝑖𝑑𝑒
春高予選が始まる少し前の夜,
いつも通り電話をしていたら,そんなことを言われた
あなたが部活に戻ったって聞いた時から,
最後くらいは見に行こうって侑李と話してた
実は試合始まる日からリヲ裙のイベントが始まるけど
やっぱ親友の大切な日だしね,
私だって人間だし
“ 今年は全国制覇するからね‼︎ “
そう笑顔で言っていたあなたの顔が思い出される
あんなに一生懸命にまっすぐに何かに立ち向かおうとする人って,素敵だと思う
私も,そんな風に思えることができるのかな,
なんていう密かな憧れを持っている
だからこそ,あなたの願いというか
目指しているところにたどり着いて欲しい
ほら,三度目の正直って言うじゃない?
一年生,二年生も,
名前は覚えてないけれど,毎年全国に行ってる強豪校に敗れているらしい
だから,その云々を晴らしてほしいといいますか
そんなのあなたがいる青城に決まって…
…あ
そっか,ノヤ君がいるのは烏野…
やばい,動揺バレバレだ
彼は力なく笑った
彼の声は少し寂しそうだった
こんなことを,こんな状況の中で思うのは良くないかもしれないけど,
彼がもし私に応援して欲しいと思っていたのなら
…なんだろう,ちょっと嬉しいかも
なにか答えないとダメだよね
でも,青城に行くって言って彼を落胆させたくない
けど,烏野を応援,なんて言ったら,あなたを裏切るみたいになっちゃう
…はやくしろ,はやく考えろ,私の答えは
…
…うん,これでいい
こんな甘ったるくて,曖昧な言葉じゃいけないのかもしれない
けど,私は私として,
支えてくれたあなたを応援したい
あなたが夢を叶えたところを見たい
…けど,
ノヤ君のことも,見ていたい
これが少女漫画みたいな話だったら,この理由は絶対に “ 好きだから “ だろう
けど,私は好き,とかじゃない
多分,好きという気持ちには辿り着けない気がする
けど,間違いなく彼がいたから私が変われたのは事実で
こんな私に,外の世界を彼も知らずのうちに教えてくれた
人として最高な彼の “ 大好きなことをやっている姿 “ を見てみたい
…から,だね
え,?
あれあれ,思ってたのと違いますな
ゲームのやりすぎか?
あれ,え,これ,告白?
…
…
もう,そういうところもノヤ君らしい
あっち側にいるけど,向こうのコートを眺める時の視線は,
常に君にあるから
そうだ,リヲ裙のゲームを攻略するのに時間をかけるように
私達は私達のペースで,時間をかけていきたい,なんて
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長 す ぎ る わ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!