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第6話

夜に壊された心
彼女に幸せになって欲しい。笑っていて欲しい。冗談を言って、一緒に夜が明けるのを待ちたい。これが僕の願いだ。

あれは、月が見えない夜だった。ここまでは夢と同じで、そこから先は百八十度予想もしていなかった展開が起こったのだ。

暗闇に慣れた目は、彼女の白さを見つけるのは容易で、表情までもがよくわかる。

「私、もう無理かもしれない。」

嫌な予感がした。僕と彼女を壊す致命的な何かが近づく。

「何が、」

「君が頑張っていることは知ってる。でもね、」

それ以上言わないで欲しかった。続けることを、僕が許さない。

「··········君は大丈夫だ。」

ほとんど空気だった。口から出された声は掠れていた。

「私は自分のことがわからないほど、バカじゃないんだよ。」

「あぁ·····。そうか。」

この際、彼女がバカだろうが、アホだろうが、ノーベル賞レベルの天才だろうが、どうでもよかった。

「立っていることでさえ辛いの。実はここまでタクシーで来ちゃうくらい。そのお金をお小遣いから払うのが惜しくないくらい。」

その声は小刻みに振動し、よく見ると膝や腕もだった。白い吐息が吐き出される気温の中、額には脂汗がにじんでいた。

「それは一時的なことだ。だって、いきなり体調が好転するわけないじゃないか。良かったり悪かったりの波を繰り返すも夢だろ。じゃあ今日は早く家に帰った方がいい。寝なくても、ベッドにいるだけでだいぶ楽になる。寝る前に温かい飲み物を飲んだ方が体が休まる·····」

「なにいってるの」

無機質な声だった。呆れるような、憐れむような目で僕を鋭く見る。

「こうなるのが嫌なの。同情とか、そんなものいらないの。君ならわかってくれるって思ってたのに・・・!君に病気のこと、話さなければよかった。」

それは鋭利な刃物だった。今までの僕だったら、血を流して悶える程だろう。

僕を傷つけるためだけに放たれた言葉。

「·····ごめん。」

実をいうと、僕は少し疲れていた。

夢でも現実でも気を張るのは、一日中頭をフル回転させているのとほとんど同類なのだ。

だからといって止められるわけもない。

あれ以上、彼女がボロボロになったら救済の方法がなくなると考えていた。

「傲慢、だったよな·····。ごめん。」

その手を引き、ベンチに座らせる。

弱音を吐く場所を奪ってしまった僕は、無意識のうちに彼女を追い詰めていた。

泣かない夜の数だけ、心が壊れた。

「·····あ、うん。」

虚ろな目で僕を見た。

「取り乱しちゃったね。やだなぁ、君の前だと感情がもろに出るから。直さないとねぇ。」

目を逸らしたくなるど、縮こまる。くしゃくしゃに震える声を引き伸ばすような不自然さ。

「君に無理をさせていたね。私ばっかりで、周りが見えていなかったな。」

僕は上手に君を導くことが出来ない。

「私、明日も生きてる?」

それは、きちんと希望が込められた素直な言葉だ。

僕にはこの言葉以外思いつかない。

「・・・ああ。明日のこの時間も僕たちはここで会う。」

これはもう、語彙力がどうのこうのという意味ではなく、僕の揺るぎない決心から来たものだった。

「うん、良かった。」

曇りのない安堵の表情は、出会ったころと変わらない美しさ。

白は彼女に良く似合う。

混じりけのない清らな色が好きだった。

誰かが「バケモノ」と呼んでも、僕は瞬時にそれを否定できる。

そしてこの先、彼女はどんな色に染まることはない。だからいつまでも、綺麗なままなのだろう。もしも、彼女が人形であればこのままとどめて置けるのに。未知の明日に怯えなくて済むのに。

ああ、なんだか泣きそうだ。

結局流れてしまった、ひとつのしずく。

僕を見て、彼女も泣いた。