第6話

#4
375
2022/11/14 12:31
モトキside.
モトキ
フィ…フィッシャー、ズ?
…なんだ、それ?
シルク
そ、フィッシャーズ。
そう言うと、またニンマリと笑う。
シルク
フィッシャーズってのは、『対狂戦士バーサーカー戦闘本部』内で結成された特殊部隊の名前。俺たち5人のことね。
シルク
…お前がいれば、フィッシャーズはなんか変わる気がする。
ンダホ
…ちなみに、根拠は??
シルク
んなもんねぇ。俺の勘。
室内に、まぁそうだと思った、という空気が立ちのぼる。
???
また勝手なことしやがる…。ハアッ
ザカオ
まぁ今始まったことじゃないから…。
ンダホ
それにシルクの勘、無駄に当たるからね。
マサイ
確かにな。あれだよ、野生の勘ってやつ。
ダーマ
…今回も働いちゃったわけね…。
シルク
…俺の勘、だいたい当たるからな。
…待って。





なんか着々と俺がフィッシャーズに入る前提で話進んでない??気のせい??
モトキ
…フィッシャーズって、何するところなんですか?
そんな彼らを前に好奇心が勝ってしまう俺も俺なんだけど。
シルク
んぇ?そんなんやることは1つだよ。
シルク
「力」使って何もかもに勝つ。
シルク
それだけ。単純だろ?
モトキ
単純なんてもんじゃない。

…俺には、能無しの俺には不可能だ。
モトキ
あ、あの―――――
マサイ
仮にモトキさんが入るとして。…モトキさんはなんの異能力を持ってるんですか?
誘いを断ろうとした矢先、俺が1番されたくなかった質問が投げられる。
モトキ
あ、えっと…
この、好奇の視線。

俺が、俺だけが幾度となく経験してきた、何とも変えられないこの感覚。

息苦しい。
モトキ
…持って、ません。
ザカオ
…え?
モトキ
…生まれつき、俺は能力を持ってません。
重苦しい沈黙。

触れてはいけない禁忌に触れてしまったかのような顔。



…大っ嫌いだ。
シルク
モトキ
…なので、シルクさんのご期待には添えません。
モトキ
マサイさん、手当、ありがとうございました。…失礼します。
一刻も早く、この場から抜け出したかった。
シルク
待て。
モトキ
…失礼します。
シルク
さっき俺は、お前がいれば俺たち、フィッシャーズが変われるって言ったな。
シルク
訂正する。
は?
シルク
今までもだが、ここからは、俺のただの勘だ。
シルク
信じて貰わなくて構わない。
そう言うと、俺の目をまっすぐ射抜く。

その目が、俺の足を止める。
シルク
…お前が危ない。
モトキ
は?
シルク
今、ここを離れたら、お前が危ない。
シルク
だから、ここにいろ。俺らと一緒に。
???
…お前、今回ばかりは何言ってんの?
ンダホ
お、おいダーマ…!
ダーマ、と呼ばれた眼鏡の男は、気だるそうに足を動かし、シルクさんの胸ぐらを掴む。
ダーマ
お前の勘が無駄に当たること、それは肯定する。
ダーマ
んで、バーサーカーに関わった民間人は、奴らに再度狙われる危険が高まるから、危ねぇっていうのも肯定する。
ダーマ
だが、こいつをなんの根拠もなくここに匿うってのが気に入らない。
ダーマ
なんで、こいつをそんなに引き止めたがる?
空気が、凍る。
シルク
…俺はこいつを引き止めたい訳じゃない。
シルク
どんな風に言えばいいのかわかんねぇし、根拠も確証も論理的なもんもなんもねぇ。
シルク
けど、
シルク
…俺の中で、何かが言ってんだよ。
シルク
「こいつは脅威になる可能性がある」って
モトキ
脅威…??
能無しの、俺が?
シルク
…身勝手な我儘だって分かってる。だけど、許してくれないか。
沈黙。
マサイ
…俺は、お前に着いてくよ。
マサイ
フィッシャーズのリーダーはお前だしな。
ザカオ
まぁ俺も、拒む理由はない…かな?
ンダホ
ん〜、1人増えたとこで何か変わるわけじゃないしね。
ダーマ
ダーマ
…お前は、いいの?
モトキ
俺、ですか?
ダーマ
お前しかいない。…いきなり変な奴らに囲まれて、ここで一緒に暮らすとかなんとかって話になってるけど?
モトキ
あ…特に困るようなことは無いですけど…。
ダーマ
…そ。
そう言うと、ようやくシルクさんの胸ぐらから手を離す。
ダーマ
…勝手にしろ。
シルク
っ!!
シルク
よっし!モトキ!!よろしくな!!
モトキ
え、えと…よろしくお願いします…?
未だに状況がよく飲み込めないのは、単純に俺の適応能力が無いからだろうか。



こうして半ば強制的に、俺と『フィッシャーズ』との共同生活…俺の、フィッシャーズの一員としての生活が始まった。

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