モトキside.
…なんだ、それ?
そう言うと、またニンマリと笑う。
室内に、まぁそうだと思った、という空気が立ちのぼる。
…待って。
なんか着々と俺がフィッシャーズに入る前提で話進んでない??気のせい??
そんな彼らを前に好奇心が勝ってしまう俺も俺なんだけど。
単純なんてもんじゃない。
…俺には、能無しの俺には不可能だ。
誘いを断ろうとした矢先、俺が1番されたくなかった質問が投げられる。
この、好奇の視線。
俺が、俺だけが幾度となく経験してきた、何とも変えられないこの感覚。
息苦しい。
重苦しい沈黙。
触れてはいけない禁忌に触れてしまったかのような顔。
…大っ嫌いだ。
一刻も早く、この場から抜け出したかった。
は?
そう言うと、俺の目をまっすぐ射抜く。
その目が、俺の足を止める。
ダーマ、と呼ばれた眼鏡の男は、気だるそうに足を動かし、シルクさんの胸ぐらを掴む。
空気が、凍る。
能無しの、俺が?
沈黙。
そう言うと、ようやくシルクさんの胸ぐらから手を離す。
未だに状況がよく飲み込めないのは、単純に俺の適応能力が無いからだろうか。
こうして半ば強制的に、俺と『フィッシャーズ』との共同生活…俺の、フィッシャーズの一員としての生活が始まった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。