第12話

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本丸二回目の涙が流れた

最初に流した涙は私の気持ちを否定され何も言い返せない自分が悔しくて流した

それじゃ今流れている涙はなんだろう?

薬研さんに怒鳴られ怖くて泣いた……いや違う

これは嬉し涙だと私は思う

私はこれほどまで誰かに心配されていたことが嬉しいのだ

あなた

グスッ……ズッ……

私は俯き一滴、また一滴と零れていく

当然みんなは泣き出した私をどうすればいいか戸惑っている
鯰尾 藤四郎
主さん落ち着いて
アタフタしていたけど優しく私の背中をさすりながら言ってくれた
鯰尾 藤四郎
急に強く言われたらびっくりするよね
ほんとうちの薬研がすみません
必死に泣き止ませようとしてくれた
鯰尾 藤四郎
でも、それくらい俺達も主さんのこと思ってるから…ね!
私は鯰尾の話が終わると首を左右に振り否定の意思を見せた
あなた

この涙はそういった事ではなく
嬉しいのです

涙を流してから私の心の中で何かがプツッと切れて、押さえ込んでいたものが溢れ出した
あなた

心配され、優しくされたのは久しぶりなのです

言いたいことを上手く伝えれないけど、一つ一つゆっくり言葉にしていこうとした

だけどその前にみんなに言わないといけないことがある

私は顔を上げ、みんなの方に向き直った
あなた

今まで酷いことをしてすみませんでした

そう言いながら深く頭を下げた

本丸に来てからそういった行動はしてなかったのでみんな目を見開いて驚いている
加州 清光
ちょ、ちょっと待って!
謝るのは俺の方だよ!
加州 清光
自分ばっかりになって主のこと気にしなかったし…
あなた

いいえ!
私も過去のことを引きずって皆さんに当たってしまって…

お互い反省をしながら謝罪をしている
加州 清光
俺からもこれだけは言わせて
加州さんも真剣な顔付きになり背筋を伸ばす
加州 清光
手入れの時何も言わずに出ていって悪かった
丁寧にやってくれてありがとな
……ありがとう……

その言葉は何年も聞いていない私にとっては懐かしく、とても暖かい

私も″あの日″以来言わなくなっていた言葉が何度も頭の中で繰り返される

加州さんの言葉に応えようと潤んだ目を擦り笑顔を作った

笑顔なんて最後に作ったのはいつか分からない

それくらい昔から私の心は閉ざされていた

楽しい、嬉しい…そんな感情を持つことなく、ただ苦しい、辛い、痛い、消えたい…そんな感情が私を支配していた

そんな私が上手に笑顔を作れているだろうか?

表情筋が少し固く、無理やり口角を上げた私はみんなから見てどう写っているのだろう?

いくら考えても分からないけど私の精一杯の笑顔を作った